【決定版】高齢者のための防犯対策バイブル:防犯設備士が教える「命と財産を守る」鉄壁の備え

目次

はじめに:なぜ今、高齢者の防犯対策が急務なのか

こんにちは。「じぶん防犯」代表、防犯設備士の守(まもる)です。私は防犯設備士として、セキュリティ関連企業で10年以上にわたり、一般のご家庭からオフィスビルまで、数多くの防犯対策の現場に携わってきました。

私がこの業界に入った頃と比べ、現在の日本の犯罪情勢は大きく様変わりしています。

かつて日本は「水と安全はタダ」と言われるほど治安の良い国でした。しかし、昨今のニュースをご覧になって、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

特に、私たち防犯のプロが危機感を抱いているのが、「高齢者を狙った犯罪の凶悪化・巧妙化」です。

かつての泥棒は「空き巣(留守宅への侵入)」が主流でした。彼らは家人と鉢合わせることを何よりも恐れていました。しかし、現在は違います。

「闇バイト」などで集められた素人が、実行役として使い捨てられ、在宅中の高齢者宅に押し入る「強盗」事件が相次いでいます。

また、電話一本で大切な老後資金を奪い取る「特殊詐欺」の手口も、年々巧妙になっています。

「うちはお金がないから大丈夫」

「田舎だから関係ない」

そうおっしゃる高齢者の方にお会いすることがよくあります。しかし、残酷な事実をお伝えしなければなりません。犯罪者は「お金がある家」を狙うのではありません。「入りやすそうな家」「防犯意識が低そうな家」を狙うのです。

本記事は、防犯の初心者の方でもすぐに実践できるよう、専門用語を避け、分かりやすい言葉で解説した「防犯対策の完全ガイド」です。

物理的な鍵の強化から、最新のデジタル機器、そしてご家族のコミュニケーションまで、あらゆる角度からあなたの生活を守る方法を網羅しました。

このレポートが、あなたと、あなたの大切なご家族の平穏な暮らしを守る「盾」となることを、心より願っています。

2025年の犯罪トレンドを知る ~敵の手口を理解する~

防犯対策を行う上で最も重要なことは、「敵を知ること」です。犯罪者がどのような手口で、何を考えて犯行に及ぶのかを知らなければ、効果的な対策は立てられません。

ここでは、最新のデータと事例をもとに、高齢者が直面しているリスクについて解説します。

「空き巣」から「強盗」へ:変化する侵入犯罪

かつて、住宅への侵入犯罪といえば、留守を狙う「空き巣」が一般的でした。

しかし、近年顕著になっているのが、家人が在宅している時を狙う「居空き(いあき)」や「忍び込み」、そして暴力を用いて金品を奪う「強盗」へのシフトです。

なぜ高齢者が狙われるのか

警察庁のデータや、現場での経験から分析すると、高齢者世帯がターゲットになるのには明確な理由があります。

  1. 資産の偏在イメージ: 「タンス預金」という言葉があるように、高齢者宅には現金が保管されているという認識が犯罪者側にあります。
  2. 身体的抵抗力の低下: 万が一鉢合わせになっても、高齢者であれば制圧しやすい、逃走しやすいと判断されます。
  3. 情報の漏洩: 固定電話を使い続けている世帯が多く、アポイントメント電話(アポ電)による資産状況の把握が容易です。
  4. 社会的孤立: 昼間の来客が少なく、近所付き合いが希薄な場合、異変が起きても周囲に気づかれにくいという「死角」が生まれます。

特に一人暮らしの高齢者は、これらのリスクが複合的に重なっており、早急な対策が必要です。

「アポ電」と「点検商法」:犯行前の偵察活動

現在の侵入犯罪の多くは、事前の「情報収集」から始まります。いきなり家に押し入るのではなく、電話や訪問で「この家にはお金があるか」「誰が住んでいるか」「防犯対策はどうなっているか」を探るのです。

アポ電(アポイントメント電話)の手口

警察です。あなたの口座が不正に使われています

区役所です。医療費の還付金があります

孫だけど、仕事でトラブルがあって…

これらは典型的な手口ですが、最近ではより巧妙な「資産確認」の電話が増えています。

アンケートに答えると粗品をプレゼントします

といって家族構成を聞き出したり、

コロナの給付金について

といって口座情報を探ったりします。

ここで得られた情報は「名簿」として犯罪グループ間で売買され、強盗のターゲット選定に使われます。

悪質な訪問業者(点検商法)

近所で工事をしている者ですが、お宅の屋根がずれているのが見えました

水道局の方から来ました。水質の検査をさせてください

このように、親切心や公的機関を装って玄関を開けさせ、家の中に入り込もうとするケースが多発しています。

彼らの目的は、高額なリフォーム契約をさせることだけではありません。

「家の間取り」「金庫の位置」「窓の鍵の種類」を目視で確認し、後日の侵入計画に役立てる「偵察部隊」である可能性が高いのです。

闇バイトと広域強盗事件

SNSで「高額報酬」「ホワイト案件」「運び屋」などの言葉で若者を募り、実行役として使い捨てる「闇バイト」による犯罪が社会問題化しています。

彼らはSNSを通じて指示役(黒幕)から連絡を受け、面識のない仲間とチームを組んで犯行に及びます。

この犯罪形態の恐ろしい点は、実行犯が「素人」であることです。プロの泥棒であれば、防犯ベルが鳴ればすぐに逃げます。

しかし、闇バイトの若者は、指示役から「逃げたら家族に危害を加える」などと脅されているケースもあり、パニックになって過剰な暴力を振るう危険性があります。

そのため、従来の「音で威嚇すれば逃げるだろう」という想定だけでなく、物理的に「入れさせない」対策の重要性が増しているのです。

家の「外周」を守る ~敷地内に入らせない鉄則~

防犯対策の基本は「犯罪対象として選ばれないこと」です。泥棒は、犯行前に必ず下見を行います。

その際、

「この家は入るのが面倒そうだ」「見つかるリスクが高い」

と思わせることができれば、その時点で被害を防ぐことができます。

これを「抑止力」と呼びます。まずは、家の外側(境界線)で犯罪者を諦めさせるための対策を見ていきましょう。

「光」の防御壁:センサーライトの活用

夜間の防犯において、最も効果的かつ低コストで導入できるのが「センサーライト」です。

人は誰しも、暗闇から急に光を浴びせられると驚き、本能的にその場から逃げ出したくなります。

また、光が当たることで自分の姿が周囲に見えてしまうことを犯罪者は極端に嫌います。

選び方のポイント:電源方式による比較

高齢者宅に設置する場合、メンテナンスの手間(電池交換など)を考慮する必要があります。

表1:センサーライトの電源方式比較

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電源方式メリットデメリットおすすめの設置場所防犯設備士の視点
コンセント式 (AC100V)・光量が非常に強く、威嚇効果が高い ・電池切れの心配がない・近くに屋外コンセントが必要 ・配線工事が必要な場合がある・玄関 ・車庫(カーポート)【推奨】 最も信頼性が高いです。配線が露出すると切断されるリスクがあるため、配管保護を行いましょう。
ソーラー式・電気代がかからない ・コンセントがない場所でも設置可能・天候により発電不足になる ・バッテリーの寿命(2-3年)がある・庭の奥 ・勝手口周辺パネルを南向きに設置する必要があります。パネルが汚れると充電されないので、定期的な清掃が必要です。
乾電池式・配線不要でどこでも設置できる ・安価で手軽・電池交換の手間がかかる ・光量がやや劣る製品が多い・物置 ・一時的な設置高齢者にとって高所での電池交換は転倒リスクがあります。手の届く範囲か、家族が交換できる場所に限定しましょう。
効果的な設置場所とテクニック
  • 死角を消す: 植木や塀の陰になりやすい場所に設置します。
  • 高さを意識する: 簡単に手が届く高さだと、ライトの向きを変えられたり、壊されたりします。2.5メートル以上の高さが理想です。
  • 「面」で守る: 1つだけでなく、家の四隅や侵入経路になりそうな場所をリレーするように設置すると効果的です。

「音」の防御壁:防犯砂利の導入

「防犯砂利」とは、踏むと「ジャリジャリ」と大きな音が鳴るように加工された石のことです。

通常、70デシベル以上(掃除機の音や電話のベルの音に相当)の音が鳴るように設計されており、侵入者は足音を消すことができません。

防犯砂利のメリット

安価: ホームセンターなどで手軽に購入でき、庭に敷くだけで効果を発揮します。
雑草対策: 土の上に厚く敷くことで、雑草が生えにくくなる効果も期待できます。

高齢者宅における注意点:転倒リスク

ここがプロとして最も注意喚起したいポイントです。防犯砂利は通常の砂利よりも粒が大きく軽量なため、足がとられやすく不安定です。

足腰の弱った高齢者が歩行する通路に敷き詰めると、つまずいて転倒し、骨折などの大怪我につながるリスクがあります。

対策
  • ゾーニング: 普段人が歩かない「窓の下」や「家の裏手」に限定して敷設する。
  • 通路の確保: 玄関から道路までのアプローチ部分はコンクリートやタイル舗装のままにし、その両脇に砂利を敷く。
  • 樹脂舗装: 砂利同士を樹脂で固める施工を行えば、見た目は砂利のままで歩きやすく、音も(若干弱まりますが)鳴るタイプがあります。

物理的な境界線:フェンスと植栽の見直し

「高い塀があれば安心」というのは大きな間違いです。一度乗り越えられてしまえば、塀が目隠しとなり、外からの視線を遮断して泥棒にとって「仕事がしやすい環境」を作ってしまいます。

  • 見通しの確保: 道路から庭や窓が見える「見通しの良いフェンス」や、背の低い生垣が推奨されます。
  • 忍び返し: 雨樋や配管を伝って2階に上がられるのを防ぐため、パイプに「忍び返し」と呼ばれるトゲ状の部材を取り付けます。

窓とドアの防御 ~侵入時間を稼ぐ「5分」の壁~

警察庁のデータによれば、侵入者が侵入を試みてから「5分」経過しても入れない場合、約7割が侵入を諦めると言われています。

つまり、私たちの目標は「絶対に壊れない家」を作ることではなく、「入るのに5分以上かかる家」を作ることです。

出典警察庁 住まいる防犯110番 侵入者プロファイリング

窓の防犯:侵入経路の6割を占める弱点

一戸建て住宅における侵入窃盗の侵入経路で最も多いのが「窓」です。特に、縁側、ベランダ、居室の窓からの侵入が目立ちます。

ガラスは、ドライバー1本あれば数秒で音もなく割ることができます(三角割りなど)。

防犯フィルム:ガラスを「壁」に変える

窓ガラスに「防犯フィルム」を貼ることは、非常に有効な対策です。これは単なる飛散防止フィルムとは異なり、厚さが350ミクロン以上ある強靭なポリエステル製フィルムです。

これを貼ることで、バールなどで叩いてもガラスにヒビが入るだけで、なかなか貫通しなくなります。

導入時の注意

  • 全面貼り: 鍵(クレセント錠)の周りだけでなく、ガラス全面に貼らなければ効果が薄れます。
  • CPマーク: 警察庁などが認定した「CPマーク(防犯建物部品)」がついている製品を選んでください。
  • 施工: 気泡が入ると強度が落ちるため、できれば専門業者に施工を依頼することをお勧めします。

補助錠:視覚的な抑止と物理的強化

窓の鍵(クレセント錠)は、防音・気密のための締め金具であり、防犯用の「鍵」ではありません。

ガラスを割られれば簡単に開けられてしまいます。そこで必須となるのが「補助錠」です。

  • 1ドア2ロック: サッシの上部と下部に補助錠を取り付けます。
  • 効果: 泥棒は外から見て「補助錠がついている」と分かると、侵入に時間がかかると判断してターゲットから外す傾向があります。
  • 高齢者への配慮: 認知機能が低下している場合、鍵が多すぎると開けられなくなり、火災時の避難に支障が出る恐れがあります。その場合は、つまみの大きいタイプや、ワンタッチで解錠できるタイプを選びましょう。

玄関の防犯:ピッキングとこじ開け対策

玄関は「家の顔」ですが、ここも狙われます。特に古い住宅では、ピッキング(特殊な工具を鍵穴に入れて開ける手口)に弱いディスクシリンダー錠が使われている場合があります。

  • ディンプルキーへの交換: 鍵の表面に多数のくぼみがある「ディンプルキー」は、ピッキングに対して極めて高い耐性を持ちます。メーカー(MIWA、GOALなど)と型番を確認し、防犯性能の高い鍵(CP認定錠)に交換しましょう。
  • ガードプレート: ドアと枠の隙間にバールを差し込まれる「こじ開け」を防ぐため、隙間を塞ぐ金属製のプレートを取り付けます。
  • ドアチェーン・ドアガード: 在宅時でも、来客対応の際は必ずチェーンやガードをかけたまま対応する癖をつけましょう。押し込み強盗の被害を防ぐ最後の砦となります。

電話による攻撃を防ぐ ~「アポ電」撃退のデジタル要塞~

第1章で述べたように、現代の強盗は「電話」から始まります。固定電話を無防備な状態にしておくことは、玄関の鍵を開けっ放しにしているのと同じくらい危険です。ここでは、最新の「防犯機能付き電話機」について解説します。

なぜ固定電話が狙われるのか

携帯電話が普及した今でも、高齢者世帯の多くは固定電話を連絡手段として維持しています。詐欺グループは、古い電話帳データなどを基に、手当たり次第に電話をかけます。

固定電話に出る=高齢者が在宅している可能性が高い、というフィルタリングが行われているのです。

最新防犯電話機の機能比較

現在、パナソニックやシャープなどの国内メーカーから、非常に優秀な防犯機能付き電話機が販売されています。

これらに買い替えるだけで、特殊詐欺のリスクを激減させることができます。

主要メーカーの防犯電話機機能比較(2025年版)

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機能名内容効果代表機種例
自動着信前警告呼出音が鳴る に、相手に対して「この通話は防犯のため録音されます」とアナウンスを流す。詐欺犯は声を録音されることを極端に嫌うため、この時点で電話を切ります。最も効果的な機能です。パナソニック VE-GDシリーズ シャープ JD-ATシリーズ
迷惑電話相談通話終了後、不審な電話だった場合にボタン一つで登録した家族や警察相談専用電話(#9110)へ録音データを転送・相談できる。「今の電話、変だったかな?」と思った時、すぐに家族が音声を確認できるため、迅速な対処が可能になります。パナソニック KX-PDシリーズ
あんしんフラッシュランプ知人(電話帳登録者)からの電話は緑色、知らない番号からは赤色のランプが光る。視覚的に「注意すべき電話」かどうかが一目でわかるため、判断力の低下した高齢者にも分かりやすい。シャープ JD-ATシリーズ
声かけ機能電話に出ると、自動的に「お金の話が出たら詐欺です」などの音声が流れてから通話が始まる。通話前に冷静さを取り戻すきっかけを作ります。各社上位モデル
0120・0800拒否勧誘に使われやすいフリーダイヤルからの着信を一括拒否する。不要なセールス電話をシャットアウトし、ストレスを軽減します。シャープ JD-Gシリーズ

留守番電話設定の常時化

新しい電話機を買う余裕がない場合でも、すぐにできる対策があります。それは「常に留守番電話設定にしておくこと」です。

  • ルール: 「電話が鳴っても出ない。相手が名乗って、知っている人だと分かってから受話器を取る」
  • 効果: 詐欺犯は証拠が残る留守番電話にはメッセージを残しません。これだけで、アポ電の9割以上を遮断できると言われています。

見守りと監視のテクノロジー ~プライバシーと安全のバランス~

離れて暮らす家族にとって、親の安全は最大の心配事です。「カメラをつけたいけれど、親が嫌がる」「費用が心配」という悩みもよく聞きます。

ここでは、最新のIoT機器と警備会社のサービスを比較します。

防犯カメラ・見守りカメラの導入

AI技術の進化により、家庭用防犯カメラは劇的に進化しています。

屋外用AIカメラ

  • 人検知機能: 従来のカメラは、木の揺れや猫にも反応して通知を送ってきましたが、最新のAIカメラは「人」の形だけを認識します。
  • スマホ連動: 敷地内に人が侵入すると、即座に家族のスマートフォンに通知と映像が届きます。さらに、スマホからカメラのスピーカーを通じて「誰ですか!警察呼びますよ!」と声をかけることも可能です。

屋内用見守りカメラとプライバシー

家の中にカメラを置くことは、防犯だけでなく、転倒などのアクシデント発見にも役立ちます。しかし、高齢者は「監視されているようで嫌だ」「プライバシーがない」と拒否反応を示すことが多々あります。

解決策
  • レンズカバー付き: 家族が見ていない時はレンズを物理的に隠せるタイプを選ぶ。
  • 会話機能重視: 「監視カメラ」ではなく、「テレビ電話ができる機械」として導入を提案する(Amazon Echo Showなど)。
  • センサー型: どうしてもカメラがダメな場合は、カメラのない「センサー」を活用します。

センサーによる「静かな見守り」

  • 開閉センサー: トイレのドアや冷蔵庫にセンサーをつけ、「一定時間開閉がない(=動いていない)」場合に家族に通知する。
  • 電力・家電の見守り: ポットを使った、照明をつけた、などの家電の使用状況をアプリで確認できるサービス(象印のみまもりほっとラインなど)。 これらはプライバシーを侵害せず、かつ「異変」をいち早く察知できるため、カメラを嫌がる親御さんへの代替案として非常に有効です。

ホームセキュリティサービス(警備会社)

「何かあった時に、すぐ駆けつけてくれる」安心感は、警備会社ならではの強みです。大手2社(セコム、ALSOK)を中心に、高齢者向けプランが充実しています。

主要警備会社の高齢者向けプラン比較(2025年想定価格・内容は変動の可能性あり)

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サービス名特徴料金イメージメリットデメリット
ALSOK みまもりサポートコントローラーに「救急」ボタンがあり、体調不良時に押すとガードマンが駆けつける。健康相談サービスも付帯。・初期費用: 0円プランあり ・月額: 約1,870円~4,000円程度・低価格から始められる ・「駆けつけ」に特化している・本格的な防犯センサーを追加すると料金が上がる
セコム 親の見守りプラン生活動線(トイレなど)にセンサーを設置し、動きがない場合に異常を検知・駆けつけ。防犯センサーとの併用が標準的。・初期費用: 約5万円~ ・月額: 約4,000円~・防犯と見守りのバランスが良い ・業界最大手の安心感・機器買取プランの場合、初期費用が高めになることがある

「駆けつけ」の価値

DIY(自分でカメラ設置)の場合、異常を検知しても、遠方の家族はすぐに駆けつけられません。

「今すぐ誰かに様子を見てほしい」という時、24時間365日動いてくれるプロがいることは、お金に代えがたい価値があります。予算が許すのであれば、警備会社の契約を強くお勧めします。

費用を抑える賢い方法 ~補助金と制度の活用~

防犯対策にはお金がかかります。「年金暮らしだから高額な出費は難しい」という方も多いでしょう。しかし、諦めないでください。国や自治体は、高齢者の防犯対策を積極的に支援しています。

自治体の補助金・助成金制度

多くの自治体(市区町村)では、「特殊詐欺対策機器」や「防犯カメラ」の購入・設置費用の一部を補助する制度を設けています。

補助対象の例(自治体により異なります)
  • 自動通話録音機: 警察署や区役所で無料配布している地域もあります。
  • 防犯機能付き電話機: 購入費用の1/2~全額(上限5,000円~10,000円程度)を補助。
  • 防犯カメラ・センサーライト: 設置費用の1/2(上限2~3万円程度)を補助。

調べ方: インターネットで「(お住まいの地域名) 防犯 補助金」や「(地域名) 特殊詐欺 助成」と検索してください。また、役所の「危機管理課」や「生活安全課」に電話で問い合わせるのが確実です。

「高齢の親のために防犯対策をしたいが、使える制度はあるか?」と聞けば、担当者が丁寧に教えてくれます。

注意点

多くの補助金は「購入前の申請」が必要です。買ってしまってからレシートを持って行っても対象外になるケースが多いので、必ず事前に確認・申請を行ってください。

クーリング・オフ制度の理解

万が一、悪質な訪問販売(点検商法など)で不要なリフォーム契約や高額な商品を売りつけられてしまった場合でも、「クーリング・オフ」制度を使えば契約を解除できます。

  • 期間: 契約書面を受け取った日から8日以内
  • 方法: ハガキなどの書面、または電磁的記録(メールやフォーム)で通知します。 困ったときは、すぐに「消費者ホットライン(局番なしの188)」へ電話してください。

家族と地域の絆で守る ~ソフト面の対策~

どれほど高価な防犯設備を入れても、使う人の心が隙だらけでは意味がありません。最後に、今日からできる「習慣」と「コミュニティ」の力についてお話しします。

ゴミ出しから漏れる個人情報

ゴミ捨て場は情報の宝庫です。ダイレクトメール、薬の袋、宅配便の伝票などから、名前、家族構成、持病(=健康状態)まで推測されてしまいます。

対策: 個人情報が書かれた部分は、シュレッダーにかけるか、油性マジックで塗りつぶす、または細かくちぎってから捨てる習慣をつけましょう。

「ながら見守り」への参加

地域全体で防犯意識を高めることも重要です。最近は「ながらパトロール」という活動が推奨されています。

  • 内容: 「犬の散歩をしながら」「花の水やりをしながら」「買い物をしながら」、周囲に不審な人がいないか意識して見る活動です。
  • 効果: 住民同士があいさつを交わし、活気のある地域だと犯罪者に思わせることで、街全体が「入りにくいエリア」になります。孤立を防ぐ意味でも、近所の方との挨拶は最強の防犯対策です。

親子で話す「防犯会議」

このレポートを読んだら、ぜひ親御さん(またはお子さん)と話し合う時間を作ってください。

 「最近、強盗のニュースが多いから心配なんだ」 「この電話機に変えると、変な電話をブロックできるらしいよ」 「補助金が出るから、センサーライトをつけてみない?」

一方的に「つけなさい」と言うのではなく、「あなたのことが大切だから、長生きしてほしいから」というメッセージと共に提案することが、対策を受け入れてもらう鍵となります。

おわりに:安心できる暮らしのために

防犯対策に「完璧」はありません。しかし、「やれること」を一つずつ積み重ねることで、被害に遭う確率は限りなくゼロに近づけることができます。

まとめ
  1. 玄関と窓: 鍵をかけ、補助錠とフィルムで強化する。
  2. 外周: センサーライトで光の結界を作る。
  3. 電話: 防犯機能付き電話機で、詐欺の入り口を塞ぐ。
  4. 意識: 家族で声を掛け合い、地域の目を活用する。

まずは、できるところから始めてみてください。例えば、「センサーライトを1つ買う」「補助錠を窓につける」。たった数千円の投資と少しの手間が、あなたと家族の未来を守ります。

私たち防犯設備士は、いつでも皆様の味方です。不安なことがあれば、地域の防犯協会や警察、信頼できる専門業者に相談してください。

あなたが安心して毎日を過ごせることを、心より応援しております。

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この記事を書いた人

セキュリティ関連企業に10年以上勤務し、現場スタッフから管理職まで幅広い経験を積んできた防犯のスペシャリスト、防犯設備士(資格番号 第2〇-3〇〇〇〇号)

現場対応から、商品選定やスタッフ教育、サービス設計まで、防犯の最前線と裏側の両方を知るプロフェッショナル。

「みんなの安全」を掲げながら、実際には自社製品への誘導に偏る情報に疑問を抱き、中立的で本当に生活者の役に立つ防犯情報を届けるべく、情報発信プラットフォーム【じぶん防犯】を立ち上げる。

「昨日の最適が今日も最適とは限らない」
「じぶんでできる楽しい防犯」

という信念のもと、最新の犯罪動向と技術に常にアンテナを張り、個人が自ら選び、守れる防犯知識と実践方法を日々発信している。

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