はじめに:あなたの家の「鍵」、本当に安全ですか?

こんにちは。「じぶん防犯」代表の守(まもる)です。私はセキュリティ関連企業に10年以上勤務し、家庭用から業務用まで、数多くの防犯対策に携わってきました。
この記事では、玄関ドアの防犯を考える上で避けては通れない「サムターン」について、その基本からプロの視点で見た最新の防犯対策まで、徹底的に解説します。
多くの方が玄関の鍵(シリンダー)の性能は気にしますが、室内側の「つまみ」であるサムターンに、これほど大きな危険が潜んでいることはあまり知られていません 。
空き巣などの侵入犯は、ピッキングが難しくなった最新の鍵を避け、このサムターンを狙う手口を多用しているのが現実です。
この記事の目的は、その危険性を正しく理解し、あなたとご家族が安心して暮らせる「最強の玄関」を作るお手伝いをすることです。この記事を読み終える頃には、あなたはご自宅のドアの弱点を正確に把握し、具体的な対策を講じられるようになっているはずです。
意外と知らない「サムターン」の基本
まずは、普段何気なく使っている「サムターン」がどのようなものなのか、その仕組みから見ていきましょう。
サムターンとは?
サムターンとは、ドアの室内側についている、鍵を使わずに指でつまんで回すことで施錠・解錠するための金具(つまみ)のことです 。
その名前は、親指(Thumb)で回す(Turn)という英語の動作に由来しています。
外側からは鍵を鍵穴(シリンダー)に差し込んで回しますが、室内側からはこのサムターンをひねるだけで、鍵と同じ役割を果たすことができます。
この手軽さが、私たちの日常生活に利便性をもたらしてくれています 。
サムターンの仕組み
サムターンがどのようにしてドアをロックするのか、そのメカニズムは非常にシンプルです。
- あなたが室内側でサムターンのつまみを回すと、その回転がドア内部の錠ケースに伝わります。
- 錠ケース内部では、回転運動によって「デッドボルト」と呼ばれる金属製の四角い棒(かんぬき)が、ドアの側面から突き出します 。
- 突き出たデッドボルトの先端が、ドア枠側に取り付けられた「ストライク(受座)」という金属製の板の穴にしっかりと収まります 。
この一連の動作によってドアとドア枠が物理的に固定され、「施錠」が完了するのです。
外側の鍵穴(シリンダー)とサムターンは、この同じデッドボルトを動かすために連動している、いわば表裏一体の存在です 。
この仕組みを理解すると、サムターンの本質的な特徴が見えてきます。
それは、利用者の利便性を最大限に高めるために、極めて直接的で単純な操作でデッドボルトを動かせるように設計されている点です。
鍵のように複雑な内部構造を介さず、「回せば、かんぬきが動く」というシンプルな構造こそが、サムターンの最大の利点であり、同時に最大の弱点にもなっているのです。
犯罪者は、この「単純さ」に目をつけました。もし外側から何らかの方法でこの単純な回転運動をサムターンに加えることができれば、どれだけ防犯性の高い鍵(シリンダー)がついていようと、それを完全に無力化して侵入できてしまうのです。
なぜ今「サムターン」が狙われるのか?侵入犯罪の現状



「うちの鍵はディンプルキーだから大丈夫」
そう思っている方も多いかもしれません。しかし、なぜ犯罪者はその頑丈な鍵をわざわざピッキングせず、サムターンを狙うのでしょうか。そこには、侵入手口の巧妙な変化があります。
犯罪手口のシフト:ピッキングからサムターン回しへ
かつて、空き巣の代表的な手口といえば「ピッキング」でした。
これは、鍵穴に特殊な工具を入れて不正に解錠する手口です 。しかし、この手口が社会問題化したことで、官民一体となった対策が進みました。
美和ロック(MIWA)やゴール(GOAL)といった鍵メーカーは、ピッキングに極めて強い「ディンプルキー」などのハイセキュリティシリンダーを開発・普及させました 。
その結果、ピッキングによる侵入は激減しました 。しかし、犯罪者は決して諦めません。
彼らは「最も抵抗の少ない道」を探し、鍵穴という「固い守り」を攻めるのをやめ、より脆弱な部分、つまり室内側の「サムターン」を直接攻撃する「サムターン回し」という手口にシフトしたのです 。
これは、防犯対策の一つの成功が、新たな脆弱性を生み出してしまった典型的な例と言えます。
セキュリティは鍵だけ、ドアだけでなく、全体として捉えなければならないという教訓がここにはあります。
侵入犯罪の統計データ
警察庁の統計によれば、住宅への侵入窃盗は決して他人事ではありません。例えば、警察庁の「住まいる防犯110番」によると、令和6年には住宅を対象とした侵入窃盗が全国で1万6,000件以上発生しており、これは1日あたり約44件もの住宅が被害に遭っている計算になります 。
侵入手口の内訳を見ると、その実態がより鮮明になります。
| 手口 | 割合 |
|---|---|
| 無締り | 47.6% |
| ガラス破り | 35.7% |
| 施錠開け(サムターン回し等) | 1.7% |
| その他 | 3.0% |
| 出典:警察庁「令和4年の刑法犯に関する統計資料」を基に警備会社ALSOKが作成したデータを参照 |
このデータが示すように、最も多い原因は鍵の閉め忘れである「無締り」です 。
しかし、注目すべきは、きちんと施錠しているにもかかわらず侵入されるケースも多々あるという事実です。
サムターン回しを含む「施錠開け」の割合は決して多くはありませんが、対策をするに越したことはありません。
空き巣はこうして侵入する!サムターン回しの全手口



「外からどうやって内側のつまみを回すの?」
と疑問に思うかもしれません。
犯罪者は、私たちが想像する以上に様々な方法でドアの弱点を突いてきます。
ここでは、実際に報告されているサムターン回しの手口を、その危険度と共にご紹介します。ご自身のドアにどのリスクがあるか、考えながらご覧ください。
| 手口 | 概要 | 危険度 | 対策の方向性 |
|---|---|---|---|
| ドアスコープ外し | ドアの外側からドアスコープ(のぞき窓)を工具で取り外し、その穴から特殊な工具を差し込んでサムターンを回す手口。作業音が静かなため、周囲に気づかれにくいのが特徴 。 | 高 | 空転式の防犯ドアスコープへの交換 |
| 郵便受け(ドアポスト)の利用・破壊 | ドアに付いている郵便受けの隙間から細い工具を差し込む、あるいはバールなどで郵便受け自体を破壊してこじ開け、そこから手や工具を入れて直接サムターンを回す手口 。 | 高 | 目隠しカバーや受け箱の設置、補助錠 |
| ドアと枠の隙間の利用 | 経年劣化などで生じたドアとドア枠のわずかな隙間に、針金のような特殊工具を差し込んでサムターンに引っ掛けて回す手口。古い建物ほど狙われやすい 。 | 中 | ガードプレートの設置 |
| ドリルによる穴あけ | サムターンの近くのドアに、電動または手動のドリルで直接穴を開け、そこから工具を入れて回す、非常に強引な手口。手動ドリルは意外なほど静かで、短時間で穴を開けられてしまう 。 | 高 | 防犯サムターンへの交換、サムターンカバー |
| ガラス破り | 玄関ドアや勝手口のドアにはめ込まれたガラス部分を割り、そこから手を入れて直接サムターンを回して解錠する。バーナーで熱して急激に冷やし音を立てずに割る「焼き破り」という手口もある 。 | 高 | 防犯フィルムの貼付、補助錠の設置 |
| サムターンカバーの焼き破り | 防犯対策として設置されたプラスチック製のサムターンカバーを、ライターやバーナーで熱して溶かし、無力化してからサムターンを回す手口 。 | 中 | 金属製や難燃性素材のカバーを選択 |
これらの手口の多様性は、犯罪者が侵入対象のドアを観察し、その構造的な弱点に応じて最も効率的でリスクの低い攻撃方法を選択していることを示唆しています。
例えば、旧式のドアスコープが付いたドアなら、静かで痕跡が残りにくい「ドアスコープ外し」を選ぶでしょう。
一方、隙間のない頑丈なドアであれば、より破壊的で騒音リスクのある「ドリルによる穴あけ」という最終手段に出るかもしれません。
このことからわかるのは、防犯対策とは、単に鍵を良くするだけでなく、
犯罪者に
「このドアは面倒だ」「リスクが高い」
と思わせるための総合的な取り組みであるということです。
次のセクションで、ご自宅のドアの弱点を一緒にチェックしていきましょう。
あなたの家は大丈夫?プロが教える「狙われやすいドア」のチェックリスト
空き巣は、闇雲に家を選ぶわけではありません。侵入に時間がかからず、見つかりにくい「入りやすい家」を事前に下見して狙いを定めています 。
以下のチェックリストを使って、ご自宅の玄関ドアが「狙われやすいドア」に当てはまらないか、確認してみましょう。当てはまる項目が多いほど、危険度が高いと言えます。
- 鍵が一つしかない(ワンドア・ワンロック)
侵入犯は時間をかけることを嫌います。鍵が一つしかないドアは、解錠にかかる時間が単純に半分で済むため、最も狙われやすい典型的な特徴です 。 - ドアスコープが旧式で、外から簡単に外せそう
古いタイプのドアスコープは、外側からコインや工具で簡単に回して外せるものがあります。これは、工具を差し込むための格好の穴となってしまいます 。 - 郵便受け(ドアポスト)がついている
便利ですが、ここは外部と室内が直接つながる唯一の開口部です。工具を差し込まれたり、破壊されたりするリスクを常に抱えています 。 - ドアにガラスがはめ込まれている
採光やデザイン性のためにガラスがはめ込まれたドアは、そのガラスが最大の弱点になります。特に一戸建ての玄関や勝手口に多く見られます 。 - ドアとドア枠の間に隙間がある
ドアの建付けが悪くなったり、ゴムパッキンが劣化したりすると隙間ができます。わずかな隙間でも、プロの使う特殊工具にとっては十分な侵入口となり得ます 。 - サムターンがシンプルな形状をしている
つまみが長く、指でひねりやすい一般的な形状のサムターンは、裏を返せば工具でも引っ掛けやすいということです。特に楕円形でない、角張ったデザインは注意が必要です 。
これらの弱点は、一つひとつが独立したリスクであると同時に、複合的に存在することで犯罪者に複数の攻撃オプションを与えてしまいます。
例えば、「郵便受け」と「旧式のドアスコープ」の両方があるドアは、犯罪者にとって「どちらか楽な方から攻められる」非常に魅力的なターゲットに見えるのです。
リスクは足し算ではなく、掛け算で増えていくと認識してください。防犯対策の目標は、これらの弱点を一つずつ潰し、犯罪者に
「どの手口も通用しそうにない」
と思わせ、犯行を諦めさせることにあります。
【決定版】サムターン回しを防ぐための完全対策ガイド
ここからは、サムターン回しを防ぐための具体的な対策を、「手軽さ」と「防犯性能」に応じた3つのレベルに分けてご紹介します。
複数の対策を組み合わせる「階層的防御」が最も効果的です。ご自身の住まいの状況や予算に合わせて、最適な対策を計画してください。
レベル1:今すぐできる!手軽な防犯グッズで守る
まずは、賃貸住宅にお住まいの方でもすぐに導入できる、手軽で効果的な対策です。
サムターンカバー/ガードの設置
これは、既存のサムターンに物理的なカバーを被せることで、外部からの工具による接触や操作を困難にする、最も基本的でコストパフォーマンスの高い対策です 。
- シンプルカバー: 両面テープで貼り付けるだけの最も安価なタイプです。ホームセンターやオンラインストアで数百円から購入できます 。ドアに傷をつけずに設置できるため、賃貸住宅に最適です。
- ダイヤル錠付きカバー: 設定した暗証番号を合わせないとカバーが開かない仕組みになっており、より高い防犯性を誇ります 。小さなお子様や認知症のご高齢者の意図しない外出(徘徊)防止にも役立ちます 。
- 鍵付きカバー: 在宅時に内側から鍵をかけることで、サムターンを完全に固定するタイプです。万が一ピッキングで外側の鍵が開けられても、内側のサムターンが回らないため、侵入を防ぐことができます 。
【プロの視点】カバー選びの注意点
サムターンカバーは非常に有効ですが、選び方を間違えると効果が半減します。注意したいのが「焼き破り」です 。
安価なプラスチック製のカバーは、ライターなどで熱せられると溶けてしまい、簡単に突破される可能性があります。
可能であれば、スチール製や難燃性のポリカーボネート素材が使われている製品を選びましょう 。
また、購入前には必ずご自宅のサムターンのサイズ(直径や高さ)を測定し、適合するかを確認してください 。
レベル2:防犯性能を格段に上げる!高機能サムターンへの交換
より根本的な対策として、サムターン自体を不正解錠が極めて困難な「防犯サムターン」に交換する方法があります。これは非常に効果が高く、プロとして最も推奨する対策の一つです 。
主要な鍵メーカーから、様々な仕組みの防犯サムターンが販売されています。
| メーカー | 製品タイプ | 仕組み | 主な特徴 | 参考価格帯 |
|---|---|---|---|---|
| MIWA (美和ロック) | スイッチ式 (B5型など) | 上下2つのボタンを指で同時に押しながらでないと回らない構造。工具による同時操作はほぼ不可能 。 | ・CPマーク認定品 ・暗闇で光る蓄光樹脂付き ・高い操作性と防犯性を両立 | ¥4,000~¥7,000 |
| GOAL (ゴール) | 偏荷重式 (TM型など) | 指で均等に力をかけないとサムターンがロックして回らない。工具による一点加圧では空転する 。 | ・緊急避難口にも使用可能 ・見た目や操作感は通常と近い ・比較的安価 | ¥2,500~¥5,000 |
| GOAL (ゴール) | スイッチ式 (TMB型など) | クラッチスイッチを押し込んでいる間だけ回転する。普段は空転しているため、不正操作が困難 。 | ・蓄光部材付き ・直感的な操作が可能 | ¥4,000~¥5,000 |
| LIXILなど | 脱着式 (セキュリティサムターン) | つまみ部分を物理的に取り外すことができる。外出時や就寝時に外しておけば、絶対に回されることがない 。 | ・物理的な最強対策の一つ ・つまみの保管場所の管理が必要 | ドア製品により異なる |
| その他 | 空転モード切替式 (KABAセーフティサムターンなど) | 付属の専用キーで操作することで、サムターンを完全に空転するモードに切り替えられる 。 | ・外出時の防犯対策に最適 ・徘徊防止にも有効 | ¥10,000~ |
これらの防犯サムターンへの交換は、ドライバー1本でご自身で行える場合も多いですが、適合する製品の選定や取り付けに不安がある場合は、無理せず鍵の専門業者に依頼しましょう。
レベル3:最強の対策「ワンドア・ツーロック」
あらゆる侵入手口に対して最も効果的な防犯の基本原則、それが「ワンドア・ツーロック(1つのドアに2つの鍵)」です。
時間を稼ぐという考え方
なぜ鍵が2つあると良いのでしょうか。警察庁の調査によると、侵入に5分以上かかると感じた場合、空き巣犯の約7割が犯行を諦めるというデータがあります 。
侵入に手間取り、5分かかると侵入者の約7割はあきらめ、10分以上かかると侵入者のほとんどはあきらめるといいます。「侵入に時間をかけさせる」。これが、侵入されるかどうかの大きなポイントになります。
鍵を2つにすることは、解錠にかかる時間を単純に2倍以上に引き延ばし、



「この家は面倒だ…」
と犯人に思わせ、犯行を断念させるための最も確実な方法なのです 。
補助錠の設置
既存の主錠に加えて、もう一つ「補助錠」を取り付けることで、ワンドア・ツーロックを実現します 。
「でも、うちは賃貸だからドアに穴は開けられない…」
と諦める必要はありません。
近年、工事不要で取り付けられる補助錠が数多く販売されています 。これらは、ドア枠に金具を挟み込んで固定するタイプで、ドアを一切傷つけることなく、誰でも簡単に設置が可能です 。
鍵の種類も、ピッキングに強いディンプルキータイプや、鍵の持ち運びが不要なダイヤルタイプなど、用途に合わせて選べます。
玄関ドア全体の弱点を塞ぐ
サムターン対策を万全にしても、他の弱点を放置していては意味がありません。以下の対策を組み合わせて、玄関ドア全体の防御力を高めましょう。
- ドアスコープ対策
外側から工具で回そうとすると空転して外れない「防犯用ドアスコープ」に交換しましょう。内側にのぞき見防止カバーが付いている製品がおすすめです 。 - 郵便受け対策
郵便受けの内側に、工具や手の侵入を防ぐための目隠しカバーや、郵便物を受けるための箱を取り付けます 。 - ガラス対策
ドアにガラスがはめ込まれている場合は、ガラス全面に「防犯フィルム」を貼り付けます。これにより、ガラスを叩き割るのに時間がかかり、侵入を困難にします 。 - ドアの隙間対策
ドアとドア枠の隙間を金属製の板で覆う「ガードプレート」を取り付けることで、バールや特殊工具の差し込みを防ぎます。 - 防犯カメラの設置
玄関先への防犯カメラの設置は、犯行の決定的な証拠を記録するだけでなく、「見られている」という強いプレッシャーを犯罪者に与え、犯行を未然に防ぐ高い抑止効果が期待できます 。
これらの対策は、単なる物理的な障壁ではありません。補助錠や防犯カメラ、警備会社のステッカーといった「目に見える対策」は、「この家は防犯意識が高い」という無言のメッセージを犯罪者に送ります。
侵入を試みる前に、心理的に
「ここはやめておこう」
と思わせることこそ、高度な防犯戦略なのです。
【住まいのタイプ別】最適なサムターン防犯対策
ここまで様々な対策を紹介してきましたが、お住まいの形態によって実行できる対策や優先順位は異なります。ご自身の状況に最適な防犯プランを立てましょう。
| 住居タイプ | 最優先対策 | 推奨追加対策 | 費用の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 持ち家(一戸建て) | 補助錠の設置 (ワンドア・ツーロック化) | ・防犯サムターンへの交換 ・窓の防犯フィルム貼付 ・防犯カメラの設置 | ¥25,000~¥55,000以上 (補助錠設置工事の場合) | 玄関だけでなく、勝手口やリビングの窓など、すべての侵入口に同様の対策が必要です。一か所でも弱い場所があるとそこを狙われます 。 |
| 持ち家(分譲マンション) | 防犯サムターンへの交換 | ・サムターンカバー ・防犯ドアスコープへの交換 ・補助錠の設置(要許可) | ¥5,000~¥20,000程度 (サムターン交換の場合) | 玄関ドアの外側は「共用部分」と見なされるため、穴あけを伴う補助錠の設置は管理組合の許可が必須です。必ず事前に管理規約を確認し、必要な手続きを行ってください 。 |
| 賃貸住宅(アパート・マンション) | 工事不要の補助錠 サムターンカバー | ・大家さん/管理会社への防犯サムターン交換の交渉 ・工事不要のドアスコープ交換 | ¥1,500~¥10,000程度 (グッズ購入の場合) | 退去時の原状回復義務があるため、ドアに穴を開けたり傷を付けたりする改造は原則NGです。まずは大家さんや管理会社に相談することが最も重要です 。 |
【賃貸住宅にお住まいの方へ】大家さんへの相談・交渉術と文例
「賃貸だから対策は無理…」
と諦めていませんか?
実は、交渉次第でセキュリティを向上させられる可能性があります。その鍵となるのが、大家さんや管理会社への「相談」です 。
交渉の根拠となる「原状回復ガイドライン」
国土交通省が定めている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、賃貸住宅の退去時のルールを定めたものです 。このガイドラインでは、以下のように定められています。
- 経年劣化や通常の使用による損耗: 修繕費用は大家さん(貸主)負担
- 入居者の故意・過失による損傷: 修繕費用は入居者(借主)負担
ここで重要なのは、「鍵の防犯性能が著しく低い」という状態をどう捉えるかです。これは単なる経年劣化ではなく、入居者の安全な生活を確保するという、建物が持つべき基本的な性能に関わる「設備の不備」と主張できる可能性があります。
特に、周囲の同程度の家賃の物件と比較して明らかに防犯性能が劣る場合、その改善を求めることは正当な要求と言えるでしょう。
交渉のポイントとメール文例
大家さんに相談する際は、高圧的な態度ではなく、丁寧にお願いする姿勢が大切です。そして、「あなた個人の不安」としてだけでなく、「この対策は、物件の資産価値と安全性を高め、大家さんにとってもメリットがある」という視点で伝えることが成功の秘訣です。
以下に、管理会社や大家さんへの相談に使えるメールの文例を記載します。ぜひ参考にしてください 。
件名:【〇〇マンション〇〇号室】玄関の防犯対策に関するご相談
〇〇(管理会社名/大家様)
いつもお世話になっております。 〇〇マンション〇〇号室に入居しております、守と申します。
この度、住まいの防犯について改めて考える機会があり、現在の玄関の鍵についてご相談させて頂きたくご連絡いたしました。
現在の鍵は、近年、侵入手口として被害が増えている「サムターン回し」という犯罪に対して、脆弱性がある可能性が指摘されているタイプです。日々の生活をより安心して送るため、また、物件全体の安全性を高めるためにも、より防犯性の高い「スイッチ式防犯サムターン」などへの交換をご検討いただくことは可能でしょうか。
国土交通省のガイドラインにおいても、建物の基本的な安全に関わる設備の維持は貸主様の責務の範囲に含まれると理解しております。この防犯対策は、私だけでなく今後の入居者様にとっても大きな安心材料となり、ひいては物件の価値向上にも繋がるものと確信しております。
交換にかかる費用のご負担など、詳細について一度ご相談させていただく機会をいただけますと幸いです。
お忙しいところ大変恐縮ですが、ご検討のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
万が一、被害に遭ってしまったら…冷静な初期対応
考えたくないことですが、もし空き巣などの侵入被害に遭ってしまった場合の正しい対応を知っておくことも、重要な防犯知識です。パニックにならず、以下の手順で行動してください。
- まずは身の安全を確保する
室内で物音がするなど、犯人がまだ潜んでいる可能性もゼロではありません。異変を感じたら、決して家の中には入らず、すぐにその場を離れて安全な場所に避難してください。 - すぐに110番通報する
安全な場所から、ためらわずに警察(110番)に通報し、「空き巣に入られたようです」と状況を正確に伝えてください 。 - 現場には絶対に触れない
警察官が到着し、現場検証が終わるまで、室内のものには一切触れないでください。犯人の指紋や足跡など、逮捕につながる重要な証拠が失われてしまいます 。 - 大家さん・管理会社に連絡する
警察の現場検証が終わり、指示を仰いだ後で、大家さんや管理会社にも被害があった旨を報告しましょう。ドアや鍵が壊されている場合、その修理についても相談が必要です 。 - 再発防止策を必ず講じる
犯人は一度侵入に成功した家を「狙いやすい家」と認識し、再びターゲットにする傾向があります。被害後は必ず、警察や私のような防犯の専門家と相談し、以前よりも強固な防犯対策を講じることが不可欠です 。
おわりに:最高の防犯は「自分ごと」と捉える意識から
ここまで、サムターンの基本から、巧妙化する犯罪手口、そして具体的な防犯対策までを詳しく解説してきました。
- サムターンは、その便利さの裏に「サムターン回し」という大きな危険をはらむ、玄関の急所です。
- 犯罪手口は多様化しており、ご自宅のドアのどこに弱点があるのかを正しく知ることが、効果的な対策の第一歩となります。
- 完璧な対策は一つではありません。「サムターンカバー」で手軽に守り、「防犯サムターン」で根本を強くし、「補助錠」で時間を稼ぐ。このように複数の防御を組み合わせる「階層的防御」の考え方が、ご自宅を鉄壁の要塞に変えます。
防犯は、警備会社や警察任せにするだけでなく、ご自身の問題として主体的に取り組む「じぶん防犯」の意識が何よりも大切です。
この記事が、あなたの家の安全を見直し、具体的な一歩を踏み出すきっかけになれば、防犯の専門家としてこれほど嬉しいことはありません。
今日からできる小さな対策が、あなたとご家族の未来の大きな安心に繋がります。あなたの安全な毎日を、心から願っています。









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