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2026年個人情報保護法改正と防犯カメラ|顔認証規制・課徴金の影響と対策

2026年1月9日、個人情報保護委員会は個人情報保護法の「制度改正方針」を公表しました。3年ごとの見直し規定に基づく今回の改正は、顔認証カメラの規制強化と課徴金制度の新設を柱とし、防犯カメラの運用に大きな影響を与える内容です。(出典:個人情報保護委員会「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討」

「うちの防犯カメラは大丈夫?」「何か対応しないといけないの?」——法改正のニュースを見てこうした不安を抱えている方は少なくありません。本記事では、防犯設備士の視点から、2026年法改正が防犯カメラ運用者に与える具体的な影響と、今から始められる対策を解説します。

※本記事は2026年3月時点の「制度改正方針」に基づく内容です。法案成立・ガイドライン公表後に順次更新予定です。

【要点まとめ】2026年法改正で防犯カメラ運用者がやるべきこと

  1. 顔認証カメラを使用している場合は、顔特徴データの取扱いに関する新義務への対応が必要
  2. 従来型カメラ(顔認証なし)は直接的な影響は限定的だが、告知・運用規程の見直しを推奨
  3. 課徴金制度の新設により、違反時の経済的ペナルティが大幅に厳格化
  4. 告知ステッカーの記載内容を改正内容に合わせて更新する
  5. クラウドカメラ利用者は委託契約の内容を再確認する
  6. 施行は2027〜2028年頃の見込み。今から段階的に準備を進める
  7. 法案成立後のガイドラインを注視し、確定情報に基づき対応を完了する

まず、お使いのカメラタイプ別の影響度を確認してください。

カメラタイプ改正の影響度主な影響内容対応の緊急度
従来型カメラ(顔認証なし)低〜中課徴金制度の新設による間接的影響。告知・運用規程の見直しを推奨施行までに対応
顔認証カメラ(顔識別機能付き)顔特徴データの新規律に直接該当。周知義務・利用停止請求対応・オプトアウト禁止早期に準備開始
クラウドカメラ委託管理ルールの強化。サービス事業者との契約見直しが必要施行までに対応

2026年個人情報保護法改正の全体像

「3年ごと見直し」とは?改正の背景と経緯

個人情報保護法には「施行後3年ごとに法律の施行状況を検討し、必要に応じて見直す」という規定があります。前回の2022年改正に続き、今回は2025年から検討が開始され、2026年1月に制度改正方針が公表されました。

AI技術の急速な発展、顔認証カメラの普及拡大、個人情報漏えい事案の増加が改正の主な背景です。

2026年改正の主要ポイント(6つの柱)

改正方針は多岐にわたりますが、防犯カメラ運用者に関連する主要なポイントは以下の6つです。(出典:BUSINESS LAWYERS「令和8年改正個人情報保護法はどうなる?」

No改正ポイント防犯カメラへの関連度
1顔特徴データの規律強化★★★(直接影響)
2課徴金制度の導入★★★(直接影響)
3子どもの個人情報保護の強化★★(学校・通学路カメラに影響)
4団体訴訟制度の拡充★(間接的影響の可能性)
5漏えい報告・本人通知の拡充★★(クラウドカメラ利用者に影響)
6オプトアウト規定の厳格化★★(顔認証カメラに影響)

法案スケジュール:提出から施行までの流れ

2026年3月時点の想定スケジュールは以下のとおりです。

時期イベント状況(2026年3月時点)
2026年1月制度改正方針の公表✅ 完了
2026年1〜6月通常国会で法案審議審議中(見込み)
2026年中改正法の成立・公布未定
2027年頃ガイドライン・Q&Aの公表未定
2027〜2028年頃改正法の施行未定

防犯カメラに直接影響する3つの改正ポイント

①顔特徴データの規律強化 ─ 新たな3つの義務

今回の改正で最も防犯カメラに影響が大きいのが、顔特徴データに関する規律の強化です。

顔認証カメラで個人の顔特徴データを取得・利用する事業者には、以下の3つの新たな義務が課される見込みです。

新義務内容防犯カメラでの対応
周知義務顔特徴データを取得していることを本人に周知する告知ステッカーに「顔特徴データの取得」を明記
利用停止請求への対応本人から利用停止を求められた場合に対応する体制を整備問い合わせ窓口の設置・対応手順の策定
オプトアウト禁止顔特徴データをオプトアウト方式で第三者に提供することを禁止第三者提供には必ず本人の事前同意が必要

個人情報保護委員会は2023年に「顔識別機能付きカメラシステムの利用について」と題するガイダンス文書を公表しており、改正法はこの方向性をさらに強化するものです。(出典:個人情報保護委員会「カメラ画像の利活用に関するQ&A」

②課徴金制度の導入 ─ 違反時の経済的ペナルティ

現行法では個人情報保護法違反に対する制裁は「命令違反に対する刑事罰」が中心でしたが、改正により行政処分としての課徴金制度が新設されます。(出典:牛島総合法律事務所「個人情報保護法 制度改正方針の公表」

課徴金の対象となる主な違反行為は以下のとおりです。

違反行為防犯カメラでの該当例
不正な手段による個人情報の取得告知なしでの顔特徴データの大量取得
利用目的の制限違反防犯目的で取得した映像をマーケティング目的で利用
委託先の監督義務違反クラウドカメラ事業者の管理不備を放置
個人情報保護委員会の命令違反是正命令に従わない場合

課徴金の金額は「違反行為に関連する経済的利益相当額」をベースに算定される見込みです。防犯カメラ運用者として重要なのは、告知義務の遵守と運用規程の整備により、違反リスクを未然に防ぐことです。

③子どもの個人情報保護の強化 ─ 学校・通学路カメラへの影響

改正方針では、子どもの個人情報について特別な配慮義務が強化される見込みです。学校や通学路に設置された防犯カメラで子どもの顔特徴データを取得する場合は、保護者への通知や同意取得の手続きがより厳格になる可能性があります。

「顔特徴データ」とは?防犯カメラとの関係

顔特徴データとは、カメラで撮影した顔画像から目・鼻・口の位置関係や輪郭の特徴を数値化(ベクトル化)したデータです。

単なる顔が映った映像と、顔特徴データの違いを整理します。

項目顔が映った映像(従来型カメラ)顔特徴データ(顔認証カメラ)
データの形式画像・動画ファイル数値データ(特徴量ベクトル)
個人の識別人間が目視で判断機械が自動で判定
個人情報保護法上の扱い個人情報(顔が鮮明な場合)個人情報 + 改正法での追加規律の対象
改正の影響度間接的直接的(新規律の対象)

お使いの防犯カメラに「顔認証」「顔識別」「Face Recognition」等の機能がなければ、顔特徴データの新規律の直接的な対象にはなりません。ただし、AI搭載カメラの中には人物検知機能と顔認証機能が併存する機種もあるため、カメラの仕様を確認しておきましょう。

従来型防犯カメラ(顔認証なし)への影響

従来型カメラ運用者が今確認すべきこと

従来型カメラへの直接的な影響は限定的ですが、以下の3点は改正を機に見直してください。

  1. 告知ステッカーの内容: 撮影目的・管理者名・問い合わせ先が明記されているか
  2. 映像データの管理: 保存期間の設定・アクセス権限の制限が適切か
  3. 運用規程の有無: 映像の取扱いルールが文書化されているか

防犯カメラと個人情報保護法の基礎知識で現行法の義務を再確認しておくことをおすすめします。

告知ステッカー・掲示内容の見直しポイント

改正を機に、告知ステッカーの記載内容を充実させましょう。

記載項目現行の推奨内容改正後の推奨内容
撮影の告知「防犯カメラ作動中」「防犯カメラ作動中(映像を記録しています)」
撮影目的記載なしが多い「防犯・セキュリティ目的」を明記
管理者記載なしが多い管理者名または管理部署を明記
問い合わせ先記載なしが多い連絡先(電話番号またはメールアドレス)を記載
顔認証の有無顔認証カメラの場合「顔特徴データを取得しています」と明記

顔認証カメラ(顔識別機能付き)への影響

顔認証カメラを運用している事業者は、改正法施行までに以下の対応が必要です。

顔認証カメラ運用者に求められる新たな対応

  1. 利用目的の再通知: 顔特徴データの取得・利用目的を具体的に明示する
  2. 告知ステッカーの更新: 「顔特徴データを取得しています」の文言を追加する
  3. 利用停止請求の対応体制: 本人からの利用停止請求に対応する窓口と手順を整備する
  4. データ管理の厳格化: 顔特徴データの保存期間・アクセス権限・削除ルールを見直す
  5. 第三者提供の見直し: オプトアウト方式での顔特徴データの提供を中止する

オプトアウト(利用停止請求)対応の整備

改正により、本人が顔特徴データの利用停止を求めた場合、事業者は原則として応じる義務を負います。防犯カメラの場合、「特定の個人の顔特徴データだけを削除する」という対応が技術的に可能かどうか、カメラメーカーやシステムベンダーに確認しておく必要があります。

クラウドカメラ利用者への影響

クラウドカメラ(映像をクラウドに保存するサービス)を利用している場合は、改正による委託管理ルールの強化に注意が必要です。

クラウドカメラ事業者に確認すべき5つのポイント

  1. データ保管場所: 映像データが国内サーバーに保管されているか
  2. アクセス権限: 映像データにアクセスできる者の範囲が限定されているか
  3. 削除方法: 保存期間経過後の自動削除が確実に行われるか
  4. 漏えい対応: データ漏えい発生時の通知体制と対応手順が明記されているか
  5. 契約内容: 委託契約に個人情報の取扱いに関する条項が含まれているか

クラウド録画対応防犯カメラの選び方も参考にしてください。

【事業者タイプ別】改正法施行までの準備チェックリスト

店舗・小売業の対応チェックリスト

  • カメラの顔認証機能の有無を確認する
  • 告知ステッカーの記載内容を更新する
  • 顔認証カメラの場合、利用停止請求への対応手順を策定する
  • 防犯カメラの撮影範囲を再確認する

マンション管理組合の対応チェックリスト

  • 共用部カメラの仕様(顔認証機能の有無)を棚卸しする
  • 管理規約の防犯カメラ条項を改正内容に照らして見直す
  • 住民への告知内容を更新する
  • クラウドカメラ利用の場合、委託契約を確認する

オフィス・工場の対応チェックリスト

  • 顔認証入退室管理システムの有無を確認する
  • 従業員への事前通知内容を改正に合わせて更新する
  • 就業規則の防犯カメラ関連条項を見直す
  • 従業員プライバシーへの配慮を再確認する

一般家庭の対応チェックリスト

  • 個人が自宅の防犯目的で使用する場合は法の適用外(改正後も同様)
  • 顔認証機能付きカメラを使用している場合は機能の確認と今後のガイドライン動向に注意
  • 告知ステッカーの掲示は法的義務ではないが、近隣トラブル予防のために推奨

改正法施行までのスケジュールと今から始められる準備

今から始められる3つの準備

施行日が確定していない現段階でも、以下の準備は今すぐ始められます。

準備項目内容所要時間の目安
①カメラの棚卸し設置台数・場所・機能(顔認証の有無)を一覧化半日〜1日
②告知ステッカーの更新撮影目的・管理者・問い合わせ先を明記したステッカーに交換1〜2日
③運用規程の策定・見直し映像の保存期間・アクセス権限・削除ルール・開示請求対応を文書化1〜2週間

これらの準備は現行法のもとでも推奨される基本対応であり、改正法の施行を待たずに実施すべき内容です。法案成立後に公表されるガイドラインの内容を踏まえて、さらに詳細な対応を追加していきましょう。

よくある質問(FAQ)─ 2026年法改正と防犯カメラ

Q1. 2026年の個人情報保護法改正で防犯カメラの運用はどう変わりますか?

顔認証機能付きカメラの場合、顔特徴データの取扱いに関する新たな義務が課されます。具体的には周知義務・利用停止請求への対応・オプトアウト禁止の3つです。従来型カメラは直接的な影響は限定的ですが、課徴金制度の新設を受け、告知・運用規程の見直しが推奨されます。

Q2. 顔認証機能のない従来型防犯カメラも法改正の影響を受けますか?

直接的な影響は限定的です。改正の主な対象は顔特徴データを取り扱う顔認証カメラです。ただし課徴金制度の導入により個人情報の不適切な取扱い全般のリスクが高まるため、告知ステッカーの掲示や運用規程の整備を再確認しておくことをおすすめします。

Q3. 顔特徴データとは何ですか?単なる顔写真との違いは?

顔特徴データとは、顔画像から目・鼻・口の位置関係や輪郭の特徴を数値化したデータです。単なる顔写真(画像データ)とは異なり、個人を機械的に識別するために生成される生体データです。改正法では特に厳格な規律の対象とされます。

Q4. 課徴金制度とは何ですか?罰金とはどう違いますか?

課徴金は行政処分として個人情報保護委員会が納付を命じる金銭的ペナルティです。罰金は刑事罰ですが、課徴金は刑事手続きを経ずに行政庁が命令できます。金額は違反行為に関連する経済的利益相当額をベースに算定される見込みです。

Q5. 一般家庭の防犯カメラも改正の対象になりますか?

個人が自宅の防犯目的のみで使用する場合は、個人情報保護法の「個人又は家庭内の利用」として法の適用外です。この点は改正後も変わりません。ただし顔認証機能付きカメラを使用している場合は、今後のガイドライン動向に注意してください。

Q6. 改正法はいつ施行されますか?

2026年3月時点では、法案は第217回通常国会(2026年1月〜6月)に提出予定の段階です。成立後、ガイドライン整備を経て公布から1〜2年後の施行が見込まれます。施行時期は2027〜2028年頃と予想されます。確定次第、本記事を更新します。

Q7. 告知ステッカーの内容は変更が必要ですか?

顔認証カメラの場合は「顔特徴データを取得しています」の追記が必要です。従来型カメラの場合も、改正を機に撮影目的・管理者・問い合わせ先を明記したステッカーへの更新を推奨します。

Q8. クラウドカメラを使っている場合、追加の対応は必要ですか?

改正により委託先の監督義務が強化される見込みです。クラウドカメラサービス事業者との契約内容を確認し、映像データの保管場所・アクセス権限・削除方法・漏えい時の対応が明記されているか点検してください。

次に読むべき記事

まとめ ─ 法改正を「知る」から「備える」へ

2026年個人情報保護法改正は、特に顔認証カメラの運用者に大きな影響を与えます。

  • 改正の3本柱は「顔特徴データ規律強化」「課徴金制度」「子ども情報保護」
  • 従来型カメラ(顔認証なし)は直接的影響は限定的。告知・運用規程の見直しを推奨
  • 顔認証カメラは周知義務・利用停止請求対応・オプトアウト禁止の3つの新義務に対応が必要
  • クラウドカメラ利用者は委託契約の点検を忘れずに
  • 施行は2027〜2028年頃の見込み。今からカメラ棚卸し・告知更新・運用規程整備を開始
  • 法案成立後のガイドライン公表を注視し、確定情報に基づき対応を完了する
  • 本記事は法改正の進行に合わせて随時更新予定

法改正は「怖いもの」ではなく、適切に準備すれば「安心して防犯カメラを使い続けるための仕組みづくり」です。本記事のチェックリストを活用して、今から段階的に準備を進めてください。

防犯カメラの法律全般については防犯カメラと個人情報保護法の全知識で、撮影範囲の法的基準は防犯カメラの撮影範囲と違法性で詳しく解説しています。「じぶん防犯」トップページもぜひご活用ください。

この記事を書いた人
防犯設備士(公益社団法人 日本防犯設備協会認定)

防犯設備士として10年以上のセキュリティ業界経験を持つ。住宅・店舗・施設の防犯カメラ設置や防犯診断の現場経験をもとに、専門知識を一般の方にもわかりやすく発信している。

プロフィール詳細 →