皆さん、こんにちは。私は「じぶん防犯」代表で防犯設備士の守(まもる)と申します。セキュリティ企業で十年以上、一般家庭の玄関カメラ設置など様々な防犯の現場を経験してまいりました。
その長いキャリアの中で確信したことがあります。それは「最新の機械セキュリティよりも、地域の人々の『目』と『声』の方が犯罪抑止力は上だ」という真実です。
AIカメラやオートロックなど最新設備も確かに有効ですが、それらはあくまで「点」での防御に過ぎません。犯罪者は機械の目が届かない死角を本能的に嗅ぎ分けます。
そして彼らが最も恐れるのは、思いがけないタイミングで向けられる近隣住民の視線や、「こんにちは」という何気ない挨拶なのです。
しかし現代では、共働き家庭の増加やライフスタイルの変化により、以前のように町内会が主導する夜回りパトロールを続けることが難しくなっています。
通勤・通学で人々はスマホに集中し、隣人の顔さえ知らないという無関心が広がっています。この「無関心」こそが犯罪者にとって最高の隠れ蓑です。
実際、警察の統計でも地域の目が行き届かない隙間の時間帯や場所で空き巣や声かけ事案などが発生しており、市民が最も不安に感じる犯罪も空き巣などの侵入犯罪が依然トップとなっています(2025年の全国調査では46.2%が「空き巣・忍び込み」を最も不安視)。
こうした背景から、今注目されているのが「ながら防犯」です。これは特別な時間を取って行うボランティア活動ではなく、日常生活を送り「ながら」、ついでに行う見守り活動のことです。
防犯初心者の方にも無理なく取り組め、現代のライフスタイルに合った新しい地域安全のモデルとして期待されています。本記事では、この「ながら防犯」の意義と具体的な実践方法を、防犯のプロの視点で丁寧に解説します。今日からすぐ実践できるヒントも満載ですので、ぜひ最後までお読みください。
現代の犯罪事情とながら防犯が求められる背景
警察庁などのデータによれば、日本は総じて治安が良いものの、依然として私たちの生活を脅かす犯罪リスクは存在します。
特に空き巣や忍び込み、子どもや女性を狙った声かけ事件などは、地域の目が行き届かない「隙間」時間・場所で発生しがちです。
実際、2025年に行われた全国防犯意識調査では、国民が最も不安に感じる犯罪の第1位が「空き巣・忍び込み」(全体の46.2%)となっており、ネット犯罪や詐欺を抑えて依然トップでした。
防犯カメラが街中に増えた現在でも侵入犯罪がなくならないのは、犯罪者が「見られていない」という安心感を得やすくなっているからです。
通勤・通学で人々はスマートフォンに夢中で周囲に無関心になりがちで、隣人同士の挨拶も減りました。この人々の無関心こそが犯罪者にとって最高の隠れ蓑なのです。では、こうした「隙間」を埋め、犯罪者に「見られている」という緊張感を与えるにはどうすれば良いのでしょうか。そのカギとして注目されているのが、次に紹介する「ながら防犯」という新しいアプローチです。
「ながら防犯」とは何か?従来の防犯パトロールとの違い
まずは「ながら防犯」という活動の定義を確認しましょう。「ながら防犯」(「ながら見守り」とも呼ばれます)とは、その名の通り日常生活のついでに防犯の目を光らせる活動です。
わざわざ特定の時間を割いて集まる必要はなく、買い物や散歩、通勤など何かをしながら周囲に気を配るだけで地域の安全に貢献できます。
この概念は、従来の「防犯パトロール」とも大きく異なります。以下に主な違いをまとめました。
| 特徴 | 従来の防犯パトロール | ながら防犯(ながら見守り) |
|---|---|---|
| 実施主体 | 自治会、防犯協会など | 個人、企業、サークル、家族 |
| 実施日時 | 特定の日時に集合して実施 | 24時間365日、個人の都合に合わせて |
| 負担感 | 時間的拘束が強く、負担が大きい | 生活動線の中で行うため、負担はほぼゼロ |
| 参加層 | 高齢者が中心となりがち | 子育て世代、現役世代、学生、愛犬家など |
| 監視エリア | 決まったルートに限定 | 生活圏全域に分散し、網羅性が高い |
このように「ながら防犯」は、従来型パトロールの課題を克服し、誰もが無理なく参加できる持続可能な防犯モデルと言えます。
実際、10人いれば全員が同じ時間に集まって巡回するよりも、それぞれがバラバラの時間・ルートで見守りをすることで、街から「空白の時間」を無くすことができます。
常に誰かの目がある状態が生まれ、犯罪者にとっては非常に犯行がしにくい環境になるのです。
また、「ながら防犯」は単に人数や時間を増やすだけでなく、防犯心理学的にも高い抑止力を発揮します。
人の目による監視と声かけ(挨拶)という要素が、犯罪者に「見られているかも」「声をかけられるかも」という意識を植え付け、犯行を諦めさせる効果があるのです。
専門的には、犯罪抑止の「4要素(目・音・光・時間)」のうち「目」と「音」の効果が期待できる取り組みと言えます。
さらに、散歩中についでにゴミ拾いをしたり、切れた街灯を自治体に報告したりすることで街の美観が保たれます。これは「割れ窓理論」の逆で、住民の目が行き届いている街ほど犯罪が起きにくいことを証明するものです。「ながら防犯」の積み重ねが、「この地域は住民に管理されている」というメッセージとなり、犯罪者に隙を与えません。
ライフスタイル別に見る5つの「ながら防犯」実践スタイル
ここからは、暮らしの中で具体的にどのようにながら防犯を実践できるか、5つのケースに分けて紹介します。きっとあなたの生活にも当てはまるものが見つかるはずです。
ウォーキング・ジョギングしながら防犯(ランニングパトロール)
健康志向の高まりで日々ランニングやウォーキングを習慣にしている人は多いでしょう。そのついでに見守りを行うのが「ランニングパトロール(略してランパト)」です。
日常的に走っている30〜50代の現役世代に特におすすめで、移動速度が速いため広範囲をカバーできるのが強みです。
また、早朝や夜間など高齢者中心の従来パトロールでは手薄になりがちな時間帯にも活動でき、防犯上の空白時間を埋められます。
始め方も簡単です。普段のランニングウェアの上に蛍光色のベスト(ビブス)やタスキを着用するだけでOK。多くの自治体や警察署でパトロール用ベストを貸与しており、気軽に参加できます。
走っている最中は、すれ違う人に「こんにちは」「お疲れ様です」など積極的に挨拶してみましょう。挨拶は周囲への存在アピールになり、何より犯罪者への強力な牽制となります。
また、毎日同じコースばかりでなく、あえて路地裏や公園内を通るなどルートに変化をつけることで死角を減らす効果もあります。
ポイント: ランパトを行う際はタイムより安全優先の意識を持つことが大切です。記録を気にして全力で走るのではなく、息が上がらないペースで周囲を見渡しながら走りましょう。「速く走ること」より「周囲に目を配ること」を優先するのが継続のコツです。
犬の散歩しながら防犯(わんわんパトロール)
愛犬との毎日の散歩は義務でもあり楽しみでもあります。この日課を地域見守りに活用する「わんわんパトロール」は、非常に継続しやすい防犯活動として知られています。
雨の日も風の日も犬のために必ず外に出ますし、犬を連れていることで子どもたちから声をかけられやすいという利点もあります。
散歩をきっかけに地域の人と挨拶を交わすことで、防犯だけでなく地域のコミュニケーション活性化にもつながります。
実際に各地で工夫が進められています。例えば大阪府泉佐野市では、犬の散歩時間を小学生の登下校時刻に合わせ、無理なく通学路の見守りを実施しています。
東京都足立区では、防犯キャラクター「Fukubo(フク坊)」のイラストが入ったトートバッグや水筒などをボランティア登録者に配布し、楽しみながら参加できる仕組みを整えています。
犬の散歩で見守りをする際は、いくつかポイントがあります。まず、リード(綱)に「パトロール中」と書かれた札や光るライトを取り付けてみましょう。
「私は見守り活動中です」というアピールになり、周囲からも認識されやすくなります。また、愛犬の様子にも注意してください。犬は人間よりも鋭い感覚で異変に気づきます。
もし散歩コースの特定の場所で急に愛犬が吠えたり怖がったりする様子を見せたら、その付近を注意深く観察しましょう。犬が教えてくれる異常が、防犯のヒントになることもあります。
花の水やり・ガーデニングしながら防犯(自宅前見守り)
「外を歩き回るのは体力的に大変…」という方は、自宅の敷地内や玄関先での見守りがおすすめです。
庭への水やり、玄関周りの掃除、草むしりなど自宅前でできる作業を利用して周囲に目を配ります。
園芸が趣味の方や在宅時間が長い高齢者・主婦(主夫)でも取り組みやすく、自宅にいながら防犯に貢献できる点がメリットです。身体的な負担が少なく、天候に左右されにくいのも利点でしょう。
効果を高めるポイントは作業する時間帯です。特に子どもの下校時間帯(午後3時前後)は「魔の時間」とも呼ばれ、不審者による声かけ事案が起こりやすい傾向があります。
このため、多くの自治体で「8・3(ハチサン)運動」が推奨されています。午前8時(登校時)と午後3時(下校時)に合わせて住民が外に出て見守りましょう、という取り組みです。
毎日は難しくても、例えば子どもたちの帰宅時間に合わせて庭先に出て「おかえり」「気をつけてね」と声をかけるだけでも、十分防犯につながります。
作業に集中しすぎず、時折顔を上げて周囲を見渡し、通りかかった子どもや近所の人に笑顔で挨拶する──そんなちょっとした気配りが犯罪の芽を摘むのです。
通勤・通学・買い物しながら防犯(移動中見守り)
特別な趣味がなくても、毎日の「移動時間」自体が防犯に役立ちます。会社員の通勤、学生の通学、主婦の買い物など、誰もが必ず行う移動のついでに周囲を見守れば、新たな時間を割く必要は一切ありません。全ての人が今日からすぐに始められる取り組みと言えるでしょう。
実践する上で大事なのは普段の移動時の意識を少し変えることです。
例えば「ながらスマホ(歩きスマホ)」は今日から禁止してみてください。
スマホ画面に夢中で歩くということは、「私は周囲を見ていません」と宣言しているようなものです。
通勤・通学中は意識的に顔を上げ、キョロキョロと周りを見渡してみましょう。それだけでも不審者への牽制になりますし、自分自身の防犯にもつながります。
また、カバンに防犯ボランティアのキーホルダーや反射材を付けておくのもおすすめです。「防犯の意識がありますよ」というさりげないアピールになり、犯罪者から狙われにくくなる効果が期待できます。
そして、いつも通る道だからこそ気づける小さな異変にも目を向けてください。「見慣れない車が長時間止まっている」「普段閉まっているはずの近所の家の窓が開いている」
など、日常の中に潜む異変にいち早く気づけるのは、普段から地域をよく知る皆さん自身です。
企業のCSR活動としてのながら防犯(業務中見守り)
最近では、企業や団体が業務の一環として見守り活動を行う事例も増えています。代表的なのが配送・配達業者による見守りです。郵便局の郵便配達員、宅配便ドライバー、新聞配達スタッフ、さらにはヤクルトレディ(ヤクルト配達員)などが、業務車両に「パトロール中」といったステッカーを貼り、配達をしながら地域の目となる取り組みです。
また地方では、農家の方が畑仕事のついでに近くの通学路に目を配るといったケースもあり、子どもの安全確保に大きな役割を果たしています。
企業にとってはこれらの活動がCSR(社会的責任)によるブランドイメージ向上につながりますし、地域にとってはプロのドライバーが広範囲を見守ってくれるという大きなメリットがあります。
まさに企業と地域の双方に利点のある「ながら防犯」モデルとして注目されています。
不審者や異常に気づくためのポイント
「ながら防犯」を行う際、「具体的に何をチェックすればいいのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。ここでは、不審者の特徴や環境の危険ポイントについて、知っておきたいポイントを解説します。
不審者の特徴を覚える(合言葉は「だ・れ・か・と」)
警察や防犯協会では、不審者の特徴をとらえる合言葉として「だ・れ・か・と」というキーワードを啓発しています。それぞれの頭文字が示す意味は以下の通りです。
- 「だ」: だらしない服装・場違いな服装(季節外れの厚着で凶器や盗品を隠している、マスクやサングラスで過度に顔を隠している など)
- 「れ」: 冷ややかな視線・挙動不審(人と目が合うとすぐ目を逸らす、家の様子をジロジロ伺っている、あてもなくウロウロしている)
- 「か」: 隠れる・陰にいる(電柱の陰、公園の茂み、自動販売機の裏など、人目につきにくい場所にじっと立っている)
- 「と」: とっさに逃げる(住民やパトカーを見かけると、急に方向転換したり走り出したりする)
ながら防犯中は、周囲にこのような人物がいないかさりげなく目を光らせてみてください。もちろん決めつけは禁物ですが、複数の特徴に当てはまる不審な人を見かけたら要注意です。
環境の「危険箇所」をチェックする
不審な人物だけでなく、周囲の環境にも目を配ることが大切です。犯罪者は「入りやすく、見えにくい場所」を好む傾向があります。見守りの際は、次のようなポイントに注意してみましょう。
- 街灯切れ: 夜間に真っ暗な死角ができる場所は要注意です。街灯が壊れていたり電球が切れていたりして暗がりになっている所はありませんか?
- 落書き・不法投棄: 壁の落書きやゴミの不法投棄が放置されている場所も危険信号です。「管理が行き届いていない場所」と見なされ、犯罪を誘発しやすくなります。
- 伸び放題の植え込み: 公園や道路脇の植木が伸びすぎて視界を遮っていないかチェックしましょう。茂みや草むらは不審者の格好の隠れ場所になります。
もしこうした異常や危険箇所を見つけた場合は、自分で無理に対処しようとせず、速やかに自治体の担当部署(道路課・公園緑地課など)や警察に通報しましょう。
「地域の異変に気づき、伝える」ことがながら防犯活動の核心です。自分一人で解決せず、適切な機関と連携することで、より安全な地域づくりにつながります。
ながら防犯に役立つ装備・グッズ
「ながら防犯」は特別な道具がなくても始められますが、いくつか装備を持っておくと安全性と防犯効果を高めることができます。ここでは、持っておきたいアイテムを必須とプラスアルファに分けて紹介します。
身を守るための必須アイテム
夜間にウォーキングや犬の散歩をする際には欠かせません。服やカバンに反射材を付けておけば、車のライトに反射してドライバーから見えやすくなり、交通事故の防止になります。タスキ型やリストバンド型、靴に貼るシールタイプなど様々な反射材が100円ショップでも手に入ります。
子どもだけでなく大人にもぜひ持ってほしいアイテムです。不審者に遭遇した際、いざ大声を出そうとしても恐怖で声が出ないことがありますが、ブザーを鳴らせば大音量で威嚇しつつ周囲に助けを求めることができます。万一の場合の「お守り」として携帯しましょう。
言うまでもなく、緊急時の110番通報には携帯電話が必要です。不審者を目撃した際、その特徴をメモしたり写真を撮ったりするのにも役立ちます。また各都道府県警が提供する防犯アプリ(例:警視庁の「Digi Police」、大阪府警の「安まちアプリ」など)を入れておけば、地域の不審者情報や防犯マップをリアルタイムで確認できるため、見守りの質が向上します。
効果アップのためのプラスアルファアイテム
夜間の散歩や見守りにはライトも有効です。足元を照らして自分が転倒しないようにするだけでなく、暗い方向に向けてライトを照らすことで「ここに人がいますよ」と存在をアピールできます。明るい光は犯罪者が嫌がる要素の一つですから、防犯効果を高めるでしょう。
地域のボランティアに登録すると、自治体から専用ベストや帽子、トートバッグなど共通デザインのグッズが支給される場合があります(例:足立区の「Fukubo」グッズ、東京都の「わんわんパトロール」用お散歩バッグなど)。こうしたアイテムを身につけることで、「地域に公認されたボランティアである」という信頼感が生まれ、自分自身の責任感も高まります。周囲から見ても一目で防犯活動中と分かるため、犯罪抑止効果もより高まります。
最近は特に女性向けに、デザイン性の高い防犯アイテムも登場しています。かわいいキャラクター付きの防犯アラームや、インテリアに馴染む玄関用の補助錠(例えば留守中であることを悟られにくくする「留守わからん錠」)など、「持ちたい」「使いたい」と思えるグッズが増えています。気に入ったグッズを取り入れることで「楽しみながら」防犯意識を高めることができるのも、継続のコツです。
ながら防犯実践時の注意点
最後に、ながら防犯を行う上で注意すべきポイントを確認しておきましょう。安全かつ気持ちよく活動を続けるために、以下の「べからず集」を心に留めてください。
地域や企業で進む「ながら防犯」の成功事例
各地の自治体や企業でも、「ながら防犯」を取り入れて成果を上げている事例が増えています。その一部を紹介しましょう。
東京都足立区:グッズ配布で気軽に参加
東京都足立区では、防犯ボランティアへの参加ハードルを下げる工夫として「グッズ戦略」を展開しています。事前にボランティア登録をした住民に対し、防犯キャラクター「Fukubo(フク坊)」のデザインが入ったオリジナルグッズ(水筒、バンダナなど)をプレゼントしているのです。
水筒は散歩時にちょうど良いサイズで実用的、バンダナは愛犬に巻いてアピールに使えるなど日常生活で役立つため、もらった住民はそれらを積極的に使います。
その結果、街の至る所で防犯の目印となるグッズが目に留まるようになり、「この街には見守りの目がたくさんある」というアピールにつながっています。また、足立区では個人でも団体(グループ)でも簡単に参加登録できるウェブフォームを用意し、誰でも気軽に見守り活動に加われる仕組みを整えています。
福岡県:若者の力で防犯活動を活性化
福岡県では、「防犯ボランティアは地味で高齢者ばかり」というイメージを払拭し、若い世代を巻き込んだエンターテインメント性のある施策に注力しています。例えば、大学生有志による「ながら見守り隊」を結成し、キャンパスから自宅への帰宅途中や部活動の移動中に見守りを実施してもらう取り組みがあります。
また、防犯をテーマにしたショートドラマをインターネットで配信したり、クイズ大会イベントを開いたりして、防犯活動そのものを地域の「楽しいイベント」に変えようとしています。
実際に、ある大学では約2,500人もの学生が見守りボランティアとして委嘱を受け、通学中に地域の見守りを行い、迷子の幼児(2歳)を保護したという実績も生まれました。
こうした若者の参加によって、街には活気が生まれると同時に、新しい「目」が増えることで犯罪抑止力も確実に高まっています。
秋田県:ジョギングパトロールで現役世代が活躍
秋田県警察では、防犯ボランティアの高齢化に対処するため、ジョギング愛好家に着目した活動を展開しました。
日頃から走っている現役世代に「ビブス(反射ベスト)を一枚羽織るだけ」で参加できる手軽さをアピールし、ランニングパトロールへの参加を呼びかけたのです。
その結果、30代〜50代の働き盛り世代を中心に多くの参加者を集めることに成功しました。彼らは早朝や夜間など、従来の高齢者パトロールでは手薄だった時間帯に活動し、地域のパトロール空白時間を埋める重要な戦力となっています。
また、個人がそれぞれ自由な時間・ルートで参加できるため、時間や場所に縛られない柔軟さが現代人のニーズにマッチし、無理なく続けられる仕組みとなっています。
茨城県稲敷市・さいたま市:登録制度と保険でボランティアを支援
自治体によっては、防犯ボランティアに公式に登録してもらい、継続を支援する制度を設けているところもあります。
例えば茨城県稲敷市では、「通勤中・買い物中の見守り活動」に参加してくれる市民を募集し、登録者にはパトロール用のタスキ(襷)などの携行品を郵送で配布しています。
窓口となる教育委員会が名簿を管理し、地域全体で活動をフォローしています。一方、政令指定都市のさいたま市では、早朝か夕方のどちらか都合の良い方だけでも参加OKとするなど、忙しい人でも登録しやすい柔軟な制度にしています。
さらに、こうした公的登録ボランティアには嬉しいメリットがあります。多くの自治体では、登録者は自動的にボランティア保険に加入できる制度を整えています。
万一、活動中に怪我をしてしまったり、自転車で巡回中に他人に怪我をさせてしまったりした場合でも、この保険が適用されれば補償を受けられます。公的なお墨付きと保険の安心感が得られることで、ボランティアもより安心して活動を続けやすくなるでしょう。
テクノロジーと融合する「ながら防犯」の未来
防犯は人の目とアナログな取り組みだけでなく、テクノロジーとの連携によって今後さらに進化していくと期待されています。ここでは、デジタル技術を活用した「ながら防犯」の最前線をご紹介します。
まず、各警察本部が提供している防犯アプリは要チェックです。警視庁の「Digi Police」、大阪府警の「安まちアプリ」、兵庫県警の「ひょうご防犯ネット」など、全国でスマートフォン向け防犯アプリがリリースされています。
これらのアプリでは、近隣で発生した不審者情報や犯罪発生件数を地図上で確認できる防犯マップ機能、画面ひとつで大音量のブザーを鳴らしつつ事前登録した家族や知人に現在地をメール送信できる緊急通報機能、さらに画面に「やめてください!」という大きな文字を表示し音声が流れる痴漢撃退機能などが搭載されています。
ながら防犯を実践する際には、こうしたアプリを起動して地域の最新情報を確認しながら歩くことで、より効果的に見守り活動を行うことができます。万一の際にもすぐ通報できる安心感があります。
次に、IoT技術を活用した見守りシステムも登場しています。その一例が、子供や高齢者に持たせたBLEタグ(Bluetooth Low Energyタグ)と地域ボランティアのスマホを連携させるサービスです。
例えば見守り対象の子供がBLEタグを携帯し、地域のボランティアや協力店舗のスマホに専用アプリを入れておくと、子供がその近くを通った際にタグの電波を検知して自動的に保護者へ通知が送られます。
つまり、あなたが普段通りに街を歩いているだけで、すれ違った子供の安全を陰ながら見守る手助けができるのです。特別な意識をせずとも貢献できる、まさに究極の「ながら防犯」と言えるでしょう。
さらに、スマートホームセキュリティとの補完関係も重要です。近年は自宅にネットワークカメラやセンサーライトを設置する家庭も増えてきました。
これらの「機械の目」は24時間体制で異常を監視してくれますが、実際に異変が起きた時に駆けつけ対応するのは人間です。
例えば、隣の家の警報アラームが鳴っていることに気づいて警察に通報する──これは近所に住む人の役割です。
機械と人間、それぞれの得意分野を組み合わせることで、地域の防犯力は最大化されます。テクノロジーを味方につけた「ながら防犯」が、これからの安全・安心な街づくりの鍵を握っているのです。
まとめ:あなたの小さな行動が犯罪を防ぐ
ここまで、「ながら防犯」について多角的に解説してきました。最後に、改めてお伝えしたいことがあります。
防犯活動というと「特別な人がやるもの」「正義感の強い人だけが活躍するもの」と思われがちです。
しかし、本当に強い地域とは、決してヒーローが派手に活躍する街ではありません。「普通の人が、普通に挨拶し合う街」こそが犯罪に強い安全な地域なのです。
例えば、今日あなたが犬の散歩中にすれ違った小学生に「おかえり!」と声をかける。ランニングの最中に切れている街灯を見つけて市役所に報告する。庭の花に水をやりながら通りを眺める──。
それらは一つ一つは取るに足らない何気ない日常の行動かもしれません。しかし、その視線と存在感は犯罪を企む者にとって大きな障壁となり、結果として誰かが被害に遭うという悲しい「非日常」を未然に防いでいるのです。
「じぶん防犯」とは、自分自身を守ることが結果的に地域全体を守ることにつながる、という考え方です。ぜひ、今日から無理のない範囲で、あなたの生活に「防犯の視点」をプラスしてみてください。普段と変わらないあなたの日常に、ほんの少し見守りの意識を加えるだけで構いません。
その小さな一歩の積み重ねが、やがて安全で安心な日本の未来を築いていくのです。
(執筆者:じぶん防犯 代表/防犯設備士・守)

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