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【防犯専門家が解説】地震・水害時に命と財産を守る。災害時の防犯対策、完全ガイド

目次

はじめに:災害は、日常だけでなく「安全」も奪う

防犯スペシャリスト「守」

はじめまして。「じぶん防犯」代表で、防犯スペシャリストの守(まもる)と申します。私はこれまで10年以上にわたり、セキュリティ関連企業で家庭や事業所の防犯対策に数多く携わってきました。

この記事でお伝えしたいのは、決して皆さんをいたずらに怖がらせることではありません。

災害という非日常において、私たちの「安全」を脅かすもう一つのリスクを知り、備えることで、あなたとあなたの大切な家族を守る「力」を持っていただくことです。私が提唱する「じぶん防犯」は、まず正しい知識を持つことから始まります。

地震や水害が発生したとき、誰もがまず自然の猛威から命を守ることに集中します。食料や水の確保、避難場所の確認は最優先事項です。

しかし、その混乱の裏で、社会機能が麻痺した隙を狙う「人為的な脅威」が静かに頭をもたげることを忘れてはなりません 。

警察や行政の機能が捜索や救助に集中し、地域の防犯能力が一時的に低下する状況は、残念ながら犯罪者にとって好機となり得ます 。

この脅威から身を守ることは、食料や水を備えるのと同じくらい重要な「災害対策」の一部です。

この記事では、災害発生前の備えから、避難時、そして避難後の生活に至るまで、あらゆる場面で役立つ具体的な防犯対策を網羅的に解説します。

この記事が、あなたとご家族の「もしも」の時に、確かな道しるべとなることを願っています。

「災害時に犯罪が増える」は本当か?知っておくべきリスクの実態

「災害時には、人の絆が深まる一方で、犯罪も増える」

と耳にすることがありますが、これは本当なのでしょうか。

この問いに対する答えは、単純な「はい」か「いいえ」ではありません。実態はもう少し複雑であり、その内実を理解することが、効果的な対策の第一歩となります。

実は、大規模災害の直後、警察が認知する犯罪の総件数は、一時的に減少する傾向が見られます 。

例えば、2016年の熊本地震では、発生後の4月から7月にかけて、前年同月比で刑法犯の認知件数は大幅に減少しました 。これは、社会全体の活動が停滞し、日常的な犯罪が起こりにくくなるためと考えられます。

しかし、この数字の裏側で、特定の種類の犯罪、特に避難して無人となった家屋を狙った「空き巣」や、混乱に乗じた「火事場泥棒」と呼ばれる窃盗犯罪が著しく増加するという、看過できない事実があります 。

熊本地震の際も、犯罪総数は減少した一方で、「空き巣」の認知件数は地震が発生した4月に急増しました 。

これは、犯罪が消えたのではなく、その種類が「災害特化型」へとシフトしたことを意味します。多くの住民が避難し、家屋が損壊・無施錠になることで、犯罪者にとってリスクが低く、侵入しやすい「ソフトターゲット」が大量に出現するためです 。東日本大震災でも、避難で無人となった民家や商店を狙った窃盗が相次ぎました 。

この「犯罪のシフト」という現象を理解することが極めて重要です。災害時の「地域の絆」や「助け合いの精神」だけを信じるのではなく、特定の犯罪が狙って発生するという現実を直視し、具体的な対策を講じる必要があります。

災害時に注意すべき犯罪は、主に以下の3つのカテゴリーに分類できます。

窃盗・空き巣(火事場泥棒)

最も一般的で、発生頻度の高い脅威です。住民が避難して長期間留守になることで、家屋や店舗が格好の標的となります 。

犯人は、郵便受けに新聞が溜まっている、夜になっても洗濯物が干したままであるといった「不在のサイン」を注意深く探しています 。

過去の災害では、家屋の損壊で施錠できなくなった場所だけでなく、

「地震後は無施錠の家が多いので、盗みやすいと思った」

という動機で、施錠忘れの家が狙われるケースも報告されています 。

詐欺・悪質商法

被災者の不安や、支援したいという人々の善意に付け込む卑劣な犯罪です 。

住宅修理詐欺

「このままでは家が倒壊する」「火災保険を使えば自己負担なしで修理できる」

などと不安を煽り、高額でずさんな工事契約を迫る手口です 。

公的機関のなりすまし

市役所職員や警察官、自衛官などを装い、安否確認と偽って家に上がり込み金品を盗んだり、義援金と称して金銭をだまし取ったりします 。

義援金詐欺

 電話や戸別訪問で、公的機関や実在する団体をかたって義援金を募る手口です 。

性犯罪・暴力

避難所など、多くの人々がプライバシーのない空間で共同生活を送る環境では、残念ながら女性や子どもを狙った性犯罪や暴力のリスクが高まります 。

授乳や着替えの覗き、体を触るといったセクハラ行為から、強姦に至るまで、深刻な被害が報告されています 。

ストレスや不安から、ささいなことでトラブルが暴力に発展するケースもあります 。これは非常にデリケートで、表面化しにくい問題ですが、決して無視できない重大なリスクです。

平時からできる、我が家を「狙われにくい家」にするための備え

災害時の防犯対策で最も効果的なのは、実は「平時からの備え」です。事が起きてから慌てるのではなく、普段から自宅を犯罪者にとって「魅力のない、やりにくいターゲット」にしておくこと。これこそが「じぶん防犯」の基本哲学です。

犯罪者は、常にリスクとリターンを天秤にかけています。侵入に時間がかかり、人に見られるリスクが高い家は、たとえ中に金品があったとしても避ける傾向にあります。

逆に、簡単に入れて、誰にも見られない家は、格好の標的となります。ここでの目標は、完璧な要塞を築くことではありません。

複数の防御策を組み合わせることで、「侵入にかかる時間」と「発覚するリスク」を最大化し、犯罪者に「この家はやめておこう」と思わせることです。これを「多層防御」の考え方と呼びます。

侵入経路を断つ物理的対策

空き巣の侵入経路で最も多いのは「窓」と「玄関」です 。ここを物理的に強化することが、対策の基本となります。

窓の強化

防犯フィルム

窓ガラスに貼ることで、叩き割られにくくする非常に有効な対策です 。ガラスが割れてもフィルムが飛散を防ぎ、侵入を遅らせることができます。災害時の飛散防止にも役立ち、一石二鳥です。100円ショップなどでも手軽に入手できますが 、より高い効果を求めるなら、専門業者による施工が推奨されます。

補助錠

クレセント錠(窓のレバー式の鍵)に加えて、もう一つ鍵を取り付けるだけで、防犯性は格段に向上します 。犯人はガラスを割った後、手を伸ばしてクレセント錠を開けますが、補助錠があればその手口が通用しにくくなります。

面格子

浴室やトイレ、1階の死角になりやすい窓などには、面格子の設置が効果的です 。面格子を破壊するのは時間と手間がかかるため、犯人は侵入を諦める可能性が高くなります。

シャッター・雨戸

これらが設置されている家は、閉めておくだけで非常に強力な防御壁となります。台風などの強風対策だけでなく、不正侵入を防ぐ最も確実な方法の一つです 。

ドアの強化

ワンドア・ツーロック

玄関ドアに鍵が一つしかない場合は、補助錠を取り付けて「ワンドア・ツーロック(1つのドアに2つの鍵)」にすることが基本です 。鍵を開けるのにかかる時間が2倍になるため、侵入を諦めさせる効果が高いとされています。

侵入を躊躇させる心理的対策

物理的な強化と同時に、犯人の「心理」に働きかけ、「見られている」「捕まるかもしれない」という意識を持たせることが重要です。

センサーライト

人の動きを感知してパッと点灯するライトは、非常に効果的な心理的抑止策です 。暗闇に潜む犯人を白日の下にさらし、

「誰かに見られたかもしれない」

という恐怖心を与えます。停電時にも機能するよう、ソーラー式や電池式のものを選ぶことが災害対策の鍵となります 。

防犯カメラ
  • 本物の防犯カメラ: カメラの存在そのものが強力な抑止力になります。災害時には、停電に備えてバッテリー内蔵型やソーラー充電式のモデルが理想です。クラウドに録画データを保存できるタイプなら、避難先からスマートフォンで自宅の状況を確認することも可能です 。
  • ダミーカメラ: 「本物は高価で手が出ない」という場合でも、ダミーカメラは非常に有効な選択肢です 。最近のものは精巧に作られており、プロでなければ見分けるのは困難です。100円ショップでも、LEDが点滅するリアルなものが手に入ります 。センサーライトなど他の対策と組み合わせることで、「この家は防犯意識が高い」と印象づけることができます。

これらの対策は、一つひとつが独立しているのではなく、相互に連携して効果を発揮します。

例えば、ダミーカメラで犯人を一瞬ためらわせ、それでも近づいてきたらセンサーライトが点灯して驚かせ、さらに窓を割ろうとしたら防犯フィルムが時間を稼ぐ。

この「時間の壁」と「心理的な壁」を何層にも重ねることが、あなたの家を「狙われにくい家」に変えるのです。

いざという時の行動が明暗を分ける:避難時の防犯対策

地震や水害が発生し、避難を決断しなければならないその瞬間。パニック状態の中で、冷静な判断を下すのは非常に困難です。しかし、この時のわずかな行動の違いが、後々の被害を大きく左右することがあります。

まず、何よりも強調したいのは、命の安全が最優先であるということです。家屋の倒壊や火災、津波や土砂災害の危険が差し迫っている場合は、ためらわずに直ちに避難してください 。

これからお話しする対策は、あくまで身の安全が確保され、行動するためのわずかな時間が残されている場合に行うべきものです。

避難時に行うべき防犯行動

施錠の徹底

避難する際は、玄関はもちろん、勝手口や窓など、すべての鍵を必ずかけてください 。これは防犯の基本中の基本ですが、混乱の中では忘れがちです。過去の災害では、施錠されていない家が狙われるケースが後を絶ちません 。

カーテンや雨戸を閉める

家の中の様子を外からうかがえないようにするため、カーテンや雨戸はすべて閉めましょう 。室内に貴重品がないか、人がいないかなどを物色されるのを防ぎます。

「在宅偽装」の工夫

泥棒は無人の家を狙います。そこで有効なのが、誰かがまだ家にいるように見せかける「在宅偽装」です。ブレーカーは火災防止のために落とすことが推奨されるため 、コンセントを使う照明は使えません。

代わりに、電池式やソーラー充電式のLEDランタンやライトを一つ、部屋の中に点灯させておきましょう 。外から明かりが見えるだけで、

「留守ではないかもしれない」

と犯人を躊躇させることができます。

貴重品の確保

現金、預金通帳、印鑑、保険証、マイナンバーカードなどの貴重品や重要書類は、非常用持ち出し袋に入れ、必ず身につけて避難してください 。自宅に残しておくと、万が一侵入された場合にすべてを失う可能性があります。耐火金庫がある場合は、持ち出せない重要書類などをそこへ保管するのも一つの手です 。

玄関に置き手紙は絶対にNG

家族への伝言などのために、玄関ドアの外側に

「○○避難所へ行きます」

といったメモを貼るのは絶対にやめてください 。これは、自ら「この家は留守です」と宣言しているのと同じであり、空き巣に格好の情報を与える行為です。連絡メモは、必ずドアの内側など、家族しか見られない場所に貼りましょう。

命を守る避難と同時に行う「防犯」チェックリスト

パニックの中でも確実に行動できるよう、シンプルなチェックリストを用意しました。避難の際に、頭の中で確認してください。

チェック項目確認
【最優先】 命の安全は確保できていますか?[ ]
全てのドアと窓の鍵をかけましたか?[ ]
カーテンや雨戸を閉めましたか?[ ]
電池式のライトを一つ、室内に点灯させましたか?[ ]
貴重品(現金、通帳、カード類)は持ちましたか?[ ]
玄関の外に避難先などのメモを貼っていませんか?[ ]

避難所と被災した自宅、それぞれの場所で身を守る方法

無事に避難できた後も、安心はできません。避難所という「公の場」と、被災した自宅という「私の場」では、それぞれ異なる種類の脅威が存在します。

脅威の性質が違えば、取るべき対策も変わってきます。ここでは、場所に応じた具体的な自己防衛策を解説します。

避難所での防犯:盗難と性被害から身を守る

避難所は、多くの被災者が心身ともに疲弊し、ストレスを抱えながら集団生活を送る特殊な環境です 。

プライバシーが確保しにくく、見知らぬ人々が混在する状況は、残念ながら盗難や性暴力といった対人犯罪のリスクを高めます。

盗難対策

避難所では、わずかな隙に所持品が盗まれる可能性があります。

貴重品は24時間肌身離さず

現金、スマートフォン、身分証などの貴重品は、絶対に自分の体から離してはいけません。就寝時も同様です。ウエストポーチや首から下げるタイプの小さなバッグなどを活用し、常に衣服の下などに身につけておきましょう 。リュックサックの中に入れて枕元に置くだけでは、寝ている間に盗まれる危険があります。

女性と子供への暴力・性被害対策

これは最も深刻で、注意を要する問題です。自分と子供の身を守るために、以下の点を徹底してください。

単独行動は絶対に避ける

トイレに行く時、物資を受け取りに行く時など、いかなる場合でも一人で行動するのはやめましょう。特に夜間は危険ですが、日中でも油断は禁物です 。必ず家族や信頼できる知人など、複数人で行動することを心がけてください。

子供から目を離さない

保護者は、常に子供と一緒に行動してください。小学生以上であっても、トイレには必ず付き添い、個室の前で待つようにしましょう 。子供同士で遊ばせる時も、必ず複数の保護者で見守る体制を作ります。

服装の工夫でカモフラージュ

性犯罪のターゲットになりにくくするため、服装にも配慮が必要です。女性や女児は、体のラインが分かりにくい、露出の少ない服装(スカートよりズボン、派手な色より地味な色)を選びましょう 。就寝時にはマスクやニット帽などで顔や髪型を隠し、女性と分かりにくくすることも自己防衛の一つです 。

防犯グッズを常に携帯

防犯ブザーやホイッスル(笛)は、危険を感じた時に大声が出せなくても、周囲に助けを求めることができる命綱です 。常に首から下げるなど、すぐに使える状態で携帯してください。笛は、瓦礫の下などに閉じ込められた際に、自分の居場所を知らせるためにも役立ちます 。

避難所の選定

可能であれば、自治体が正式に指定した「認定避難所」を選びましょう。警察官や役場職員の巡回が多く、防犯体制が比較的整っている可能性が高いからです。やむを得ず認定外の避難所に身を寄せる場合は、より一層の警戒が必要です 。

被災した自宅に戻る際の注意点

避難生活が落ち着き、一時的に自宅へ戻る際にも、新たな危険が待ち受けています。

それは、家に侵入した空き巣犯と鉢合わせしてしまう「居空き(いあき)」のリスクです。これは非常に危険な状況であり、絶対に避けなければなりません。

自宅へ戻る際の安全手順

一人では戻らない

自宅の様子を見に戻る際は、決して一人で行動しないでください 。必ず日中の明るい時間に、家族や隣人など複数人で戻りましょう。

入る前に様子をうかがう

家に近づいたら、すぐに中には入らず、まず周囲から家の様子を観察します。窓ガラスが割られていないか、ドアがこじ開けられた形跡はないかなどを確認します。

物音を立てて気配を確認

中に誰かが潜んでいる可能性を考え、ドアを開ける前に大声で呼びかけたり、ドアをノックしたりして、内側にいる人間にこちらの存在を知らせます。

異変を感じたら即座に離れて通報

少しでも不審な点を感じたり、中に誰かがいる気配がしたりした場合は、絶対に中へ入ってはいけません。すぐにその場を離れて安全な場所へ移動し、警察(110番)に通報してください。犯人と直接対決するのは最も危険な行為です。

護身用具の準備

万が一、犯人と鉢合わせてしまった場合の最終的な逃走手段として、催涙スプレーなどを携帯しておくことも一つの選択肢です 。相手の顔に吹きかけることで一時的に行動不能にし、その隙に逃げる時間を稼ぐことができます。あくまでも「逃げるため」の道具であり、立ち向かうためのものではないことを理解しておきましょう。

心の隙間に付け入る卑劣な犯罪:災害に便乗した詐欺・悪質商法の手口と対策

災害後の混乱と不安は、人々の冷静な判断力を奪います。

「早く日常を取り戻したい」「少しでも助けが欲しい」

という切実な思いは、残念ながら詐欺師たちにとって絶好のターゲットとなります 。彼らは被災者の心の隙間、そして支援したいという人々の善意の両方に付け込んできます。

よくある詐欺・悪質商法の手口

住宅修理詐欺

最も多発する手口の一つです。

「ボランティアで点検に来ました」

などと突然訪問し、

「このままでは危ない」「すぐに工事しないと大変なことになる」

と不安を煽ります。そして、

「火災保険が使えるから自己負担はありません」

という甘い言葉で高額な契約を迫るのが典型的なパターンです 。実際には不要な工事だったり、保険金が下りなかったり、手抜き工事をされたりするケースが後を絶ちません。

公的機関を装う詐欺

市役所や電力会社、警察官、自衛官などを名乗り、

「義援金を配るために口座番号が必要」「耐震調査のために家の中を見せてほしい」

などと、もっともらしい理由をつけて個人情報を聞き出したり、家に上がり込もうとしたりします 。制服や身分証らしきものを提示されても、安易に信用してはいけません。

義援金詐欺

電話や訪問で「被災者のために募金活動をしています」と協力を求めてくる手口です 。実在する公的機関やNPOの名前をかたることもあり、非常に見分けがつきにくい場合があります。

詐欺被害を防ぐための鉄則

その場で契約しない・払わない

どんなに急かされても、その場で契約書にサインしたり、お金を支払ったりするのは絶対にやめましょう。まともな業者であれば、考える時間を与え、相見積もりを取ることを嫌がったりはしません。

身元を必ず確認する

訪問者には、必ず身分証明書の提示を求めてください。そして、名刺や身分証に書かれた連絡先ではなく、自分で調べたその機関の公式な電話番号に電話をかけて、本当にそのような職員や事実があるのかを確認しましょう 。特に、自衛官は原則として単独で行動することはない、という点も覚えておくと役立ちます 。

公的機関は訪問や電話でお金を要求しない

市役所などの公的機関が、電話や戸別訪問で義援金を求めたり、キャッシュカードを預かったり、暗証番号を聞き出したりすることは絶対にありません 。このような話が出た時点で、100%詐欺だと考えてください。

災害時に多発する詐欺の手口と「撃退法」

いざという時に冷静に対応できるよう、典型的な手口と正しい対応を覚えておきましょう。

スクロールできます
詐欺の種類犯人の典型的なセリフあなたの正しい対応(撃退法)
住宅修理詐欺「このままだと家が危ない。保険金で直せるから今すぐ契約を」「家族と相談します。複数の業者から見積もりを取ってから決めます」と、その場での即決を断る 。
公的機関のなりすまし「市役所の者です。調査のため中に入らせてください」「身分証を見せてください。今から役所に電話して、あなたが本物か確認します」と伝え、相手の反応を見る 。
義援金詐欺「被災者のために義援金を集めています。ご協力を」「どちらの団体ですか?後で自分で調べて、信頼できると判断したら直接寄付します」と伝え、その場での支払いを断る 。
防犯スペシャリスト「守(まもる)」

もし少しでも「おかしいな」と感じたら、一人で悩まず、すぐに専門の窓口に相談してください。

「ご近所の目」が最強の防犯システムになる:地域で取り組む防災と防犯

ここまで、個人の家や身を守るための対策についてお話ししてきました。しかし、どんなに頑丈な鍵や高性能なカメラを設置しても、それだけでは限界があります。

災害という非常事態において、最も強力で、そして最も温かい防犯システムとなるのが、「地域コミュニティの力」、すなわち「ご近所の目」です。

犯罪者は、人に見られること、顔を覚えられることを極端に嫌います。彼らが好むのは、住民同士が無関心で、誰が住んでいるのかも分からないような、匿名性の高い場所です 。

逆に、住民が互いに顔見知りで、挨拶を交わすような地域は、不審者がいればすぐに目立ち、声をかけられるリスクが高いため、犯罪者にとっては非常に「やりにくい」環境なのです。

災害時には、警察などの公的な防犯機能は救助活動などで手薄にならざるを得ません 。その空白を埋めるのが、私たち住民自身の目です。

地域全体で防犯意識を共有することで、個々の対策が何倍もの効果を発揮する「力の相乗効果」が生まれます。これは、お金をかけずに実践できる、最も効果的な安全対策の一つです。

今日からできる地域防犯アクション

挨拶を交わす

最も簡単で、最も効果的な第一歩です。日頃からご近所さんと

「こんにちは」「お帰りなさい」

といった挨拶を交わす習慣をつけましょう。これだけで、地域に「目」が行き届いているという無言のメッセージになり、見慣れない人物がうろついていればすぐに気づくことができます 。

情報を共有する

「最近、見かけない車が停まっている」「怪しい訪問販売が来た」

といった情報を、ご近所間で共有する仕組みを作っておきましょう。簡単な回覧板や、地域のグループチャットなどが有効です。

自主的なパトロール

地域の安全が確認された段階で、住民が協力してパトロールを行うことは、非常に強力な抑止力になります 。一人では危険なので、必ず二人以上のグループで、日中の明るい時間帯に行いましょう。

犬の散歩をしながら、買い物のついでに、といった「ながらパトロール」でも十分効果があります。全国には、こうした住民の自主的な活動を警察が支援する仕組みもあります 。

災害に備えて非常食を備蓄するように、平時から「ご近所との良好な関係」を備蓄しておくこと。これこそが、いざという時にあなたと地域全体を守る、最強の防衛ラインとなるのです。

まとめ:今日から始める「じぶん防犯」で、あなたと家族の未来を守る

災害は、いつ、どこで起こるか予測できません。しかし、災害時に発生しうる人為的な脅威に対しては、事前に知り、備えることで、被害を最小限に抑えることが可能です。

この記事で解説してきたことは、決して特別なことではありません。しかし、知っているか知らないか、そして平時から行動しているかしていないかで、あなたと家族の運命は大きく変わる可能性があります。

最後に、命と財産を守るための重要なポイントをもう一度確認しましょう。

  1. 平時に備える: 災害は「起きてから」では遅すぎます。自宅の窓やドアを物理的に強化し、センサーライトやカメラで心理的な壁を築くなど、「狙われにくい家」にするための対策を平時から行いましょう。
  2. 危機に賢く行動する: 避難時は命が最優先。その上で、可能であれば「施錠」「目隠し」「在宅偽装」を徹底し、貴重品は必ず携帯してください。
  3. 避難所では警戒を怠らない: 避難所では「単独行動を避ける」「貴重品は肌身離さず」「防犯グッズを携帯する」という三原則を守り、特に女性や子供の安全に最大限配慮してください。
  4. 「うまい話」を疑う: 災害後の不安に付け込む詐欺師の手口を知り、「その場で契約しない・払わない」「必ず身元を確認する」という鉄則を忘れないでください。
  5. 地域と繋がる: 最強の防犯システムは、あなたのご近所さんです。日頃からの挨拶やコミュニケーションが、いざという時の助け合いと防犯の輪を築きます。

災害対策というと、食料や水の備蓄、避難経路の確認などがまず頭に浮かびますが、これからはぜひ、そのリストに「防犯対策」を加えてください。

今日から始める「じぶん防犯」の一つひとつの積み重ねが、あなたと、あなたの愛する家族の未来を守る、最も確かな礎となるのです。

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この記事を書いた人

セキュリティ関連企業に10年以上勤務し、現場スタッフから管理職まで幅広い経験を積んできた防犯のスペシャリスト。

現場対応から、商品選定やスタッフ教育、サービス設計まで、防犯の最前線と裏側の両方を知るプロフェッショナル。

「みんなの安全」を掲げながら、実際には自社製品への誘導に偏る情報に疑問を抱き、中立的で本当に生活者の役に立つ防犯情報を届けるべく、情報発信プラットフォーム【じぶん防犯】を立ち上げる。

「昨日の最適が今日も最適とは限らない」
「じぶんでできる楽しい防犯」

という信念のもと、最新の犯罪動向と技術に常にアンテナを張り、個人が自ら選び、守れる防犯知識と実践方法を日々発信している。

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