じぶん防犯

不審者に遭ったらどうする?子供に教える対処法と練習方法

「いかのおすし」は教えた。でも実際に不審者に遭遇した時、わが子は本当に行動できるのだろうか——。そう不安に感じている保護者は少なくありません。

警察の統計によると、13歳未満の子供への声かけ事案は下校時間帯の午後3〜5時台に集中し、発生場所の約7割が道路上です。(出典:大阪府警「子供に対する声掛け等事案の認知状況」)つまり、毎日の通学路で子供が一人になる時間こそが最もリスクの高い場面です。

本記事では、防犯設備士の視点から声かけパターンの分類、遭遇時の具体的な対処法、110番通報の仕方、家庭でできるロールプレイ練習、そして遭遇後の心のケアまで解説します。「いかのおすし」の基本を知っている方が、次のステップとして実践力を身につけるための内容です。

【結論】不審者に遭遇したら──子供に教える「3つの行動原則」

子供が不審者に遭遇した時に取るべき行動は、シンプルな3つの原則に集約されます。

不審者に遭った時の3つの行動原則

  1. 距離を取る ── 腕2本分(約2メートル)以上離れる
  2. 逃げる ── ランドセルを捨ててでも全力で安全な場所へ走る
  3. 大人に知らせる ── 近くの大人・110番・学校・保護者に報告する

この3原則は「いかのおすし」の「行かない・乗らない・大声を出す・すぐ逃げる・知らせる」を、実際の行動手順として再構成したものです。以降のセクションで、それぞれを具体的に深掘りします。

データで見る子供の声かけ被害──いつ・どこで・どう狙われるのか

不審者対策を教える前に、まずは「どんな状況で声かけが起きているのか」をデータで把握しておきましょう。

声かけ事案の発生件数と時間帯

子供を対象とした声かけ事案は、全国の警察が日々認知しています。大阪府警の統計では、令和6年(2024年)に府内だけで516件の声かけ事案が認知されています。(出典:大阪府警「令和6年中における子供に対する声掛け等事案の認知状況」

時間帯リスクの高さ主な状況
7〜8時台登校時、一人になる区間
14〜15時台低学年の下校時間帯
15〜17時台最も高い下校〜帰宅の時間帯
17〜18時台習い事・塾帰り

下校時間帯に被害が集中する理由は、子供が一人で行動する機会が最も多くなる時間帯だからです。集団登校で朝の安全は確保されていても、下校時は一人になりやすい点に注意が必要です。

被害に遭いやすい場所と状況

声かけ事案の発生場所は道路上が約70%と圧倒的に多く、次いで公園が約20%を占めています。帰宅途中の「いつもの通学路」こそが最も声かけが起きやすい場所です。

被害時の状況を見ると、「帰宅途中」が全体の約43%で最多、「遊び中」が約24%、「通学途中」が約15%と続きます。(出典:千葉県警「不審者情報の分析結果」

犯罪機会論で読み解く「狙われるポイント」

犯罪機会論では、犯罪が起きやすい場所の条件を「入りやすく、見えにくい場所」と定義しています。声かけ事案もこの原理に当てはまります。

  • 見えにくい場所:塀や生垣で周囲から見通せない道、街灯が少ない路地
  • 入りやすい場所:車で近づきやすい広い道路、人通りが少ない住宅街

お子さんの通学路で「大人の目が届きにくい場所」がどこにあるか、地域安全マップを活用して親子で確認しておくことが予防の第一歩です。

不審者の「声かけパターン」7類型と見分け方

不審者の声かけには一定のパターンがあります。パターンを事前に知っておくことで、子供が「これは危ない」と瞬時に判断できるようになります。

類型具体的なセリフ例対処法
①誘惑型「お菓子あげるよ」「ゲーム見せてあげる」「いりません」と言って離れる
②道案内型「図書館はどこ?」「この道わかる?」「わかりません」と答えてその場を離れる
③緊急装い型「お母さんが事故に遭った」「病院に連れて行く」絶対についていかず、自分で親に電話する
④親切装い型「送ってあげるよ」「重そうだね、持ってあげる」「大丈夫です」と断り、距離を取る
⑤威圧型「住所を教えろ」「名前は?」答えずに逃げる。大声を出す
⑥接触型「写真撮ってあげる」「握手しよう」身体に触れさせず、すぐに離れる
⑦SNS型「会って話そう」「プレゼントあげる」絶対に会わない。すぐに親に相談する

特に③の「緊急装い型」は子供の不安を煽るため効果的で、冷静な判断が難しくなります。「どんなことを言われても、知らない人にはついていかない」という原則を繰り返し教えることが重要です。

⑦の「SNS型」は近年急増しているパターンです。ネット上で信頼関係を作ってから実際に会おうとする手口は、子供にとって「知り合い」のように感じてしまうため、特に警戒が必要です。

遭遇した時の対処法──距離・逃走・助けの求め方

実際に不審者と対面した時、子供がとるべき具体的な行動を解説します。

安全な距離(腕2本分=約2メートル)の保ち方

知らない大人に話しかけられたら、まず「腕を横に伸ばして2本分」の距離を保つよう教えましょう。約2メートルの距離があれば、腕をつかまれそうになっても逃げる余裕が生まれます。

話しかけられた時に近づいてしまう子供は多いものです。「知らない人とは、腕2本分はなれるんだよ」と具体的な身体の基準で教えると、子供でも実践しやすくなります。

追いかけられた時の逃げ方──「タッチ&ゴー」と荷物放棄

ランドセルや荷物をつかまれたら、迷わず手を離して逃げることを教えてください。荷物より命が大切です。

「タッチ&ゴー」とは、近くの建物や塀をタッチポイントにして素早く方向転換する逃げ方です。直線で走るよりも、角を曲がって視界から消えることが効果的です。

逃げる方向は「人がいる場所」を目指します。コンビニ、スーパー、ガソリンスタンドなど、営業中のお店に飛び込むのが最も安全です。

大声は本当に出せるのか?練習のコツ

恐怖を感じた瞬間に大声を出せる子供は、練習なしではほとんどいません。声帯は筋肉と同じで、日頃から使っていなければ本番で動きません。

練習方法:

  • カラオケで「助けて!」「来ないで!」と叫ぶ練習をする
  • 公園や広い場所で、遠くの親に向かって大声を出す遊びをする
  • 防犯ブザーを「声の代わり」として常に手の届く位置に携帯する

防犯ブザーは声が出なくても助けを求められる重要なツールです。ランドセルの底に入れてしまうと意味がないので、肩ベルトの手が届く位置に付けましょう。

逃げ込み先の見つけ方──「こども110番の家」とコンビニ

通学路にある「こども110番の家」の場所を、親子であらかじめ確認しておきましょう。実際に訪ねてみて、「ここに逃げ込めばいいんだよ」と体験させると、いざという時に迷いません。

「こども110番の家」が見つからない場合は、コンビニ・スーパー・交番・ガソリンスタンドなど「大人がいて営業中の場所」ならどこでも助けを求められます。

車から声をかけられた場合の対処法

車を使った声かけは、徒歩の不審者より逃げにくい状況を作り出します。車特有の対処法を教えておきましょう。

車との安全な距離と立ち位置

歩道を歩く際は、車道から離れた位置を歩く習慣をつけましょう。車が横に止まっても、車との距離が2メートル以上あれば、ドアを開けられても手が届きません

車の進行方向と反対に逃げる理由

車に追いかけられそうになったら、車の進行方向と反対に走って逃げます。車はすぐにUターンできないため、反対方向に逃げれば追いかけるのに大幅な時間がかかります。

このルールは子供にとってわかりやすく、「車が右から来たら、左に走る」とシンプルに教えられます。

ドアを開けられた場合の対処

もし車のドアを開けられても、絶対に車の中に入ってはいけません。全力で反対方向に走りながら、大声を出すか防犯ブザーを鳴らしましょう。

車のナンバーや色を覚えられれば理想ですが、まずは逃げることが最優先です。安全な場所に逃げた後に、覚えている特徴を大人に伝えましょう。

遭遇後の通報手順──110番・学校・保護者への報告

不審者から逃げた後の行動も大切です。通報と報告の方法を事前に教えておきましょう。

110番通報で伝えるべき3つのこと(台本付き)

110番通報は無料で、公衆電話からもかけられます。伝えるべきことは3つだけです。

伝えること子供のセリフ例
①何が起きたか「知らない人に声をかけられました」「車に乗れと言われました」
②今いる場所「○○小学校の近くの公園にいます」「○○コンビニの前です」
③不審者の特徴「背が高い男の人でした」「黒い服を着ていました」

「うまく話せなくても大丈夫。電話に出たおまわりさんが質問してくれるから、答えるだけでいいよ」と伝えてあげると、子供の通報へのハードルが下がります。

学校・保護者への報告の仕方

110番に電話した後、または安全な場所についたら、学校か保護者に連絡します。キッズ携帯や防犯ブザーのGPS機能がある場合は、位置情報の共有も有効です。

学校への報告は、他の児童への注意喚起にもつながります。「大したことない」と思っても、必ず報告するよう教えましょう。

不審者の特徴を覚える「上から下へ」メソッド

逃げた後に不審者の特徴を思い出す際は、「上から下へ」の順で思い出すと整理しやすくなります。

  1. : 帽子の有無・髪型・髪の色
  2. : メガネの有無・マスクの有無・年齢の印象
  3. : 上着の色・ズボンやスカートの色
  4. 持ち物: カバン・傘・自転車
  5. その他: 車のナンバー・色・声の特徴

完璧に覚える必要はありません。1つでも2つでも覚えていることが捜査の大きな手がかりになります。

家庭でできるロールプレイング練習──台本5パターン

「いかのおすし」を知識として知っているだけでは、いざという時に体が動きません。定期的なロールプレイ練習で、実践力を身につけましょう。

パターン1:道を聞かれた場合

保護者(不審者役): 「ねえ、○○図書館ってどこか知ってる?一緒に案内してくれない?」

子供の練習セリフ: 「わかりません」→ 2メートル離れる → その場を離れて人がいる場所へ

パターン2:「お母さんが事故に遭った」と言われた場合

保護者(不審者役): 「大変!お母さんが事故に遭ったの。病院に連れて行ってあげるから車に乗って」

子供の練習セリフ: 「ついていきません」→ その場を離れる → 自分でお母さんの携帯に電話する

パターン3:車に乗るよう誘われた場合

保護者(不審者役): (車の窓から)「お家どこ?送ってあげるよ」

子供の練習セリフ: 「大丈夫です」→ 車の進行方向と反対に離れる → 近くのお店に入る

パターン4:写真を撮られそうになった場合

保護者(不審者役): 「かわいいね、写真撮ってもいい?」

子供の練習セリフ: 「いやです」→ 手で顔を隠しながら離れる → 大人に知らせる

パターン5:SNSで「会おう」と言われた場合

保護者(不審者役): (スマホ画面を見せながら)「ネットで知り合った○○さんが『明日会おう』って言ってきたよ。どうする?」

子供の練習セリフ: 「会いません」→ すぐにお父さん・お母さんに見せる

ロールプレイのコツ──楽しく・怖がらせすぎず

ロールプレイを効果的に行うコツ

  • ゲーム感覚で楽しく。「逃げられたね!すごい!」とほめる
  • 1回5分程度、月1回を目安に定期的に実施
  • 怖がらせすぎない。「練習だから大丈夫」と安心させる
  • 低学年はパターン1〜3、高学年はパターン4〜5も含めて段階的に
  • 入学前の準備として5〜6歳から始めるのがおすすめ

子供の心のケア──恐怖体験後のフォロー

実際に不審者に遭遇した子供は、強い恐怖やストレスを感じています。適切なフォローをしないと、登校拒否やPTSD(心的外傷後ストレス障害)につながる可能性があります。

子供に現れる急性ストレス反応のサイン

不審者に遭遇した後、以下のようなサインが見られたら注意が必要です。

  • 夜眠れない、悪夢を見る
  • 一人で外出するのを怖がる
  • 学校に行きたがらない
  • 急に甘えるようになる
  • 食欲が落ちる
  • ぼーっとしている時間が増える
  • 今まで一人でできていたことができなくなる

保護者がすべき3つの対応

  1. 気持ちを受け止める: 「怖かったね」「よく逃げたね」「あなたは何も悪くないよ」と声をかける
  2. 安心できる環境を作る: 数日間は一緒に登下校する、一人にしない時間を増やす
  3. 無理に聞き出さない: 子供が話したがらない場合は無理に詳しく聞かない。話したい時に聞いてあげる

専門機関への相談が必要なケース

上記のストレス反応が1ヶ月以上続く場合は、専門機関への相談を検討しましょう。

  • スクールカウンセラー: 学校に常駐または定期訪問しているカウンセラーに相談
  • 小児科・児童精神科: 身体症状(頭痛・腹痛・不眠)が続く場合
  • 子供の人権110番(0120-007-110): 法務省が運営する無料相談窓口

(参考:犯罪被害者メンタルヘルス情報ページ

不審者情報の確認方法と地域の見守り

「どこで不審者が出たか」を把握しておくことで、通学路のリスクを事前に避けられます。

警察・自治体の不審者情報メール

ほとんどの都道府県警が「安全・安心メール」や「子供見守りメール」を配信しています。お住まいの地域のメール配信サービスに登録し、リアルタイムで情報を受け取れるようにしましょう。

防犯アプリ・SNSの活用

「Yahoo!防災速報」や各地域の防犯情報アプリを活用すると、プッシュ通知で不審者情報が届きます。学校の連絡メールと併せて、複数の情報源を確保しておくのがおすすめです。

地域の見守り活動との連携

ながら見守りスクールガードによる地域の見守り活動は、不審者への大きな抑止力になります。保護者自身が見守り活動に参加することで、通学路の「大人の目」を増やし、子供の安全を地域全体で守る体制が作れます。

塾や習い事の帰り道など、見守りの目が薄くなる時間帯・ルートについても、保護者同士で情報を共有しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 子供が不審者に声をかけられたらまず何をすべき?

「距離を取る→逃げる→大人に知らせる」の3ステップが基本です。まず腕2本分(約2m)の距離を確保し、危険を感じたらランドセルを捨ててでも全力で逃げましょう。逃げた先のコンビニや「こども110番の家」で大人に助けを求めてください。

Q2. 不審者の声かけにはどんなパターンがある?

大きく7つの類型があります。お菓子やゲームで釣る「誘惑型」、道を聞く「道案内型」、「お母さんが事故に遭った」と焦らせる「緊急装い型」、「送ってあげる」と近づく「親切装い型」、威圧して従わせる「威圧型」、写真を撮影しようとする「接触型」、SNSで関係を作る「SNS型」です。パターンを知っておくと「これは危ない」と早く気づけます。

Q3. 子供に「大声を出せ」と言っても実際に出せますか?

練習なしでは、恐怖で声が出ない子がほとんどです。日頃からカラオケや公園で「助けて!」「来ないで!」と大きな声を出す練習をしておきましょう。声が出なくても防犯ブザーを鳴らせるよう、いつも手の届く位置に付けておくことも大切です。

Q4. 車から声をかけられた時はどう逃げる?

車の進行方向と反対に走って逃げるのが鉄則です。車はすぐにUターンできないため、追いかけるのに時間がかかります。普段から車道から離れて歩く習慣をつけ、車が近づいてきたらすぐに反対方向へ走れるよう教えておきましょう。

Q5. 110番通報で子供は何を伝えればいい?

伝えることは「何が起きたか」「今いる場所」「不審者の特徴」の3つだけで大丈夫です。「うまく話せなくても、おまわりさんが質問してくれるから大丈夫だよ」と教えておくと安心です。110番は無料で、公衆電話からもかけられます。

Q6. 不審者対策のロールプレイは何歳から始めるべき?

入学前の5〜6歳から始めるのがおすすめです。「道を聞かれたらどうする?」のようなシンプルな場面から始め、遊び感覚で楽しく練習しましょう。月1回程度の定期的な練習が効果的です。

Q7. 不審者に遭った後、子供が怖がっています。どうすべき?

「怖かったね」「もう大丈夫だよ」と子供の気持ちを受け止めましょう。数日間は一緒に登下校するなど安心できる環境を作ってください。不安や不眠などの症状が1ヶ月以上続く場合は、スクールカウンセラーや小児科など専門機関への相談をおすすめします。

Q8. 地域の不審者情報はどこで確認できる?

警察や自治体が配信する「安全・安心メール」への登録が基本です。「Yahoo!防災速報」などのアプリでもプッシュ通知で不審者情報を受け取れます。学校の緊急連絡メールと併せて、複数の情報源を確保しておきましょう。

まとめ

子供が不審者に遭遇するリスクは、下校時間帯の通学路に集中しています。しかし、具体的な対処法を事前に教え、ロールプレイで実践力を身につけておけば、いざという時に身を守れる子供を育てることができます。

この記事のポイント

  • 不審者に遭ったら「距離を取る→逃げる→大人に知らせる」の3原則
  • 声かけ事案は午後3〜5時台の下校時間帯、道路上に集中
  • 声かけには7つのパターンがある。事前に知っておけば早く気づける
  • 車からの声かけは「進行方向と反対に逃げる」が鉄則
  • 110番通報は「何が起きたか」「場所」「特徴」の3つを伝えるだけでOK
  • ロールプレイは5〜6歳から、月1回、ゲーム感覚で楽しく
  • 遭遇後の心のケアも重要。症状が1ヶ月続いたら専門機関へ

まずは今日、お子さんと「知らない人に声をかけられたらどうする?」と話してみるところから始めてみてください。通学路の安全対策全体については通学路の安全を守る完全ガイドで、通学路の交通事故対策については交通安全教育ガイドで詳しく解説しています。その他の防犯対策は「じぶん防犯」トップページからご覧いただけます。