災害時の防犯対策ガイド|地震・水害から家を守る備え
「地震が起きたら、まず身の安全を確保する」——これは多くの方がご存知でしょう。しかし、災害時に急増する「空き巣」や「詐欺」への備えは十分にできていますか?
2024年1月の能登半島地震では、石川県内で発災から約2か月間に51件の窃盗被害が報告されました。避難で無人になった家が次々と狙われ、「火事場泥棒」が大きな社会問題となったのです。(出典:東京新聞「能登半島で発生した空き巣・悪質商法」)
本記事では、防犯設備士として10年以上の実務経験を持つ筆者が、災害時に命と財産を守るための防犯対策を徹底解説します。平時の備えから避難時の行動、避難所での注意点、詐欺の撃退法まで——この1記事で「災害時の防犯対策」のすべてがわかる完全ガイドです。
【まず確認】災害防犯の5つのポイント
- すべての窓とドアを施錠してから避難する — 災害時の侵入窃盗も「無施錠」の家が最初に狙われる
- 貴重品は非常持ち出し袋にまとめておく — 現金・通帳・保険証・マイナンバーカードを即座に持ち出せる状態に
- 在宅を偽装する — 室内灯やラジオをつけたまま避難。「留守です」と悟られない工夫
- 避難所では貴重品を肌身離さない — 就寝時もウエストポーチ等で身につける
- 「行政から委託された」という訪問者を安易に信用しない — 災害便乗詐欺の典型的手口
それぞれの詳しい内容を、以下で解説していきます。
災害時に犯罪が増えるのは本当?データで見る被害の実態
「大災害の後に犯罪が増える」——これは残念ながら事実です。災害時に発生する犯罪の実態を、過去の災害データから確認していきましょう。
東日本大震災・熊本地震での空き巣被害
2011年の東日本大震災では、被災地で深刻な窃盗被害が発生しました。
| 災害 | 主な被害 |
|---|---|
| 東日本大震災(2011年) | 宮城県内の窃盗被害総額が発災から26日間で約1億円。ATM窃盗被害は同年7月までに22件、被害総額約1億8,000万円 |
| 熊本地震(2016年) | 被災家屋への空き巣、避難所での盗難、義援金詐欺が多発。特に益城町周辺で被害が集中 |
| 能登半島地震(2024年) | 石川県内で発災から約2か月間に51件の窃盗被害を確認 |
東日本大震災では、福島第一原子力発電所周辺の住民が避難した地域で空き巣や店舗荒しなどの侵入窃盗が大幅に増加しました。コンビニのATMを狙った窃盗被害は宮城県内だけで22件、被害総額は約1億8,000万円にのぼっています。混乱に乗じて燃料を盗む、無人の民家や店舗に侵入するなど、災害直後の混乱期に犯罪が集中する傾向が見られました。
熊本地震(2016年4月)でも同様の被害が発生しています。最大震度7を2度記録した益城町を中心に、全壊・半壊した住宅への空き巣が相次ぎました。避難所での財布やスマートフォンの盗難、「義援金を集めています」という電話詐欺も報告されています。
災害の規模が大きいほど、そして復旧が長引くほど犯罪は増加する傾向があります。住民が避難して無人になった地域では、空き巣のリスクが飛躍的に高まるのです。「自分の住んでいる地域では大丈夫」という油断は禁物です。過去の大災害で必ず発生している犯罪であることを、しっかり認識しておきましょう。
能登半島地震(2024年)で相次いだ空き巣・詐欺
2024年1月1日に発生した能登半島地震(M7.6)では、発災直後から被災地での犯罪が問題となりました。
石川県警の発表によると、地震発生から約2か月間で51件の窃盗被害が確認されています。輪島市では、半壊した自宅からみかんを盗まれた70代の夫婦が「しんどい時に泥棒するなんて」と怒りと悲しみを語る報道もありました。(出典:中日新聞「震災4日後ミカン盗まれた夫婦が心境」)
石川県警は被災地でのパトロールを強化し、全国から応援の警察官を派遣して対応にあたりましたが、広範囲の被災地すべてをカバーすることは困難でした。
さらに、地震に便乗した詐欺の相談も急増しました。
- 義援金詐欺: 自治体職員を名乗り、電話で義援金を集めようとする手口
- 屋根修理詐欺: 「行政から委託された」と称し、ブルーシートを1メートル1,000円で売りつける手口
- SNS詐欺: 被災者を装い、PayPay等の送金URLをSNSに投稿して寄付金を騙し取る手口
能登半島地震に関する詐欺・悪質商法の相談件数は、2024年1月19日時点で155件に達しています。(出典:日本経済新聞「地震乗じた詐欺、能登でも」)
なぜ災害時に犯罪が増えるのか?3つの要因
災害時に犯罪が増加する背景には、3つの構造的な要因があります。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 無人化 | 住民が避難して無人の家が大量に発生。施錠されていても「通報されない」という安心感が犯罪者を大胆にさせる |
| 監視機能の低下 | 停電で防犯カメラやセンサーライトが機能停止。街灯も消え、暗闇が犯罪を助長する |
| 警察力の分散 | 警察官が救助活動・交通規制に動員され、パトロールの頻度が大幅に低下する |
この3つの要因が重なることで、平時とは比べものにならないほど犯罪リスクが高まります。
さらに、災害時には「被災者同士の助け合い」という善意の心理が働くため、見知らぬ人への警戒心が薄れやすくなります。この心理的な隙を突いて、被災者を装った窃盗犯や、支援者を装った詐欺師が暗躍するのです。
だからこそ、災害が起きてからではなく、平時から防犯対策を講じておくことが不可欠です。以下のセクションでは、「平時の備え」「避難時の行動」「避難所での対策」「詐欺の撃退法」「地域連携」の5つの観点から、具体的な防犯対策を解説していきます。
平時からできる「狙われにくい家」づくり
災害時に家を守るための防犯対策は、平時から始まっています。空き巣の手口と対策をベースに、災害を想定した「狙われにくい家」づくりを解説します。
窓の防犯強化(防犯フィルム・補助錠)
空き巣の侵入経路で最も多いのは「窓」で、全体の約半数を占めます。災害時は窓ガラスが割れやすいうえ、停電で防犯センサーが機能しない可能性もあるため、物理的な強化が特に重要です。
- 防犯フィルムの貼付 — ガラスが割れても貫通しにくくなり、侵入に5分以上の時間を稼げる。CPマーク付き製品を選ぶことで、地震の揺れによるガラスの飛散防止にもなる
- 補助錠の追加 — クレセント錠(窓の中央にあるレバー型の鍵)だけでは不十分。窓の上下にサッシ用補助錠を取り付ける(1個500〜1,500円)
- 面格子・シャッターの設置 — 1階の窓や死角になりやすい窓に有効。災害時は雨戸やシャッターを閉めて避難する
- 防犯ガラスへの交換 — 新築やリフォーム時に検討。2枚のガラスの間に特殊フィルムを挟んだ構造で、衝撃に強く飛散しにくい
窓の対策は「防犯」と「防災」の両方に直結します。防犯フィルムやシャッターは、空き巣対策であると同時に地震時のガラス飛散防止にも効果があるのです。特に小さなお子さんがいるご家庭では、ガラスの飛散による怪我を防ぐ意味でも、窓の防犯強化を優先的に進めることをおすすめします。
なお、防犯フィルムの選び方については別記事で詳しく解説しています。災害対策を兼ねて導入を検討する場合は、飛散防止効果の高いCPマーク付き製品を選びましょう。
ドアの防犯強化(ワンドアツーロック)
玄関からの侵入は全体の約2割を占めます。ワンドアツーロックの実践が基本です。
- ワンドアツーロック — 鍵を2つにするだけで、侵入に必要な時間が倍になる
- ディンプルキーへの交換 — ピッキングに強い高性能シリンダー錠。鍵の表面に丸いくぼみがあるタイプ
- サムターン回し防止カバー — 郵便受けやドアスコープから工具を差し込む手口を防ぐ(1,000〜3,000円)
- ガードプレートの設置 — ドアと枠の隙間を覆う金属板。バールによるこじ破りを防止する
災害時はドア枠が歪んで鍵がかかりにくくなることもあります。地震でドアが開かない、あるいは閉まらないという事態は珍しくありません。その場合はドアチェーンやつっかえ棒で応急的に固定しましょう。普段からワンドアツーロックを実践しておけば、仮に1つの鍵が故障しても、もう1つの鍵が侵入の時間稼ぎになります。
侵入を躊躇させる心理的対策(センサーライト・ダミーカメラ)
物理的な強化に加えて、犯罪者の心理に訴える対策も重要です。防犯の4原則(時間・光・音・目)を意識しましょう。
- センサーライト — 人感センサーで自動点灯。災害時にはソーラー充電式が停電でも機能するため特に有効
- ダミーカメラ — 本物と見分けがつかないものを選べば、低コストで「監視されている」という心理的プレッシャーを与えられる
- 防犯砂利 — 建物の周囲に敷くだけで、踏むと大きな音が出る。停電時でも機能する「音」の防犯対策
- 防犯ステッカー — 「防犯カメラ作動中」のステッカーを目につく場所に貼る
これらの対策は、空き巣が犯行前の「下見」で確認するポイントに直接訴えかけます。防犯設備士の現場経験から言えば、「センサーライト+防犯カメラ(またはダミー)+防犯砂利」の3点セットは、コストパフォーマンスに優れた心理的防犯対策の組み合わせです。複数の対策を組み合わせることで、「この家はリスクが高い」と思わせる効果が飛躍的に高まります。
特に災害時は、停電で「光」と「目」(カメラ映像)が失われがちです。電源に依存しない「音」(防犯砂利、防犯ブザー)と、ソーラー充電で機能する「光」(ソーラー式センサーライト)の準備が、災害に強い防犯環境の基盤となります。
停電でも動く防犯グッズの選び方
災害時の最大の課題は「停電」です。商用電源に依存する防犯機器は、停電と同時に機能停止してしまいます。災害に備えるなら「電源なしでも動く防犯グッズ」の準備が不可欠です。
| 防犯グッズ | 電源タイプ | 特徴 | 価格帯 |
|---|---|---|---|
| ソーラー式センサーライト | ソーラー充電 | 日中に充電、夜間に自動点灯。配線工事不要 | 2,000〜8,000円 |
| 電池式窓アラーム | 乾電池 | 窓の振動や開閉を検知して大音量で警報 | 1,000〜3,000円 |
| バッテリー内蔵防犯カメラ | 内蔵バッテリー+ソーラー | 停電時も数日〜数週間稼働。クラウド録画対応 | 10,000〜30,000円 |
| 防犯ブザー(携帯型) | 乾電池/ボタン電池 | 避難所でも使える個人用防犯ツール | 500〜2,000円 |
| 防犯砂利 | 電源不要 | 完全な無電源防犯対策。停電・断水に影響されない | 3,000〜10,000円 |
特にソーラー式センサーライトは、停電時にこそ真価を発揮します。停電で周囲が暗くなった中で自動点灯すれば、不審者への強力な威嚇になります。センサーライトの選び方・設置ガイドも合わせてご確認ください。
防犯カメラについては、クラウド録画に対応したモデルを選ぶことで、本体が地震で破損・水没しても録画データが残ります。2026年2月時点では、ソーラーパネル一体型の屋外用防犯カメラが1万円台から購入可能です。
防犯グッズを選ぶ際のポイントをまとめると、災害対策を兼ねるなら「商用電源に頼らない電源方式」を最優先に考えてください。「普段使いもできて、災害時にも機能する」防犯グッズこそが、コストパフォーマンスの高い投資です。すでに商用電源の防犯機器を設置している場合は、UPS(無停電電源装置)を導入するか、ソーラー式・電池式の機器を追加で備えることを検討しましょう。
【保存版】災害種別ごとの防犯リスクと対策
地震・水害・台風では、それぞれ異なる防犯リスクが発生します。災害の種類に応じた対策を押さえておきましょう。
| 項目 | 地震 | 水害(洪水・浸水) | 台風 |
|---|---|---|---|
| 主な防犯リスク | 建物損壊で窓・ドアが破損し侵入が容易に | 長期避難で無人化し空き巣のターゲットに | 停電・断水で防犯機器が停止 |
| 被害が多い犯罪 | 空き巣、火事場泥棒、がれき撤去を装った窃盗 | 空き巣、復旧作業員を装った窃盗 | 空き巣、便乗詐欺(屋根修理詐欺等) |
| 避難期間の目安 | 数日〜数か月(建物被害次第) | 数日〜数週間 | 数時間〜数日 |
| 最優先の対策 | 雨戸・シャッターを閉める、貴重品持ち出し | 2階以上に貴重品を移動、施錠の徹底 | 雨戸閉鎖、停電対応グッズの準備 |
| 停電リスク | 高(ライフライン損壊) | 中〜高(配電設備浸水) | 高(送電線の損傷) |
地震の場合:建物損壊による侵入リスク
地震で最も警戒すべきは、建物の損壊によって物理的な防犯機能が失われることです。窓ガラスが割れる、ドア枠が歪んで施錠できなくなる、壁にヒビが入る——こうした被害が出ると、空き巣の侵入は極めて容易になります。
- 雨戸やシャッターがある窓は、平時から閉めておく習慣をつける(特に外出時)
- ドア枠が歪んだ場合、ドアチェーンやつっかえ棒で応急的に固定する
- 建物損壊が激しい場合は、室内の写真を撮影してから速やかに避難する
- 防犯フィルムは、ガラスの飛散防止と侵入防止の両方に効果を発揮する
能登半島地震では、全壊・半壊した建物に空き巣が入る被害が多数報告されました。建物に被害があっても、可能な限り施錠の確認を行うことが重要です。
また、地震後の片付けや修理で業者や知人が自宅に出入りする場面が増えます。その際も、貴重品は目の届かない場所に置かず、作業中も一人は家にいるようにしましょう。がれき撤去を装って不審者が侵入するケースも報告されています。
水害の場合:長期避難による無人化リスク
水害(洪水・浸水)では、避難期間が長期化しやすいのが特徴です。浸水した家は復旧に時間がかかるため、数週間にわたって無人になるケースが少なくありません。
- 避難前に2階以上に貴重品を移動させる(浸水対策と防犯の両面で有効)
- 近隣住民と連絡先を交換し、互いの自宅を気にかける体制を作る
- 復旧作業で業者が出入りする際は、身元確認を徹底する
- 浸水後に自宅に戻る際は、不審な形跡がないか確認してから入室する
水害の場合、1階部分が浸水してドアや窓が開いた状態になることがあります。水が引いた後に速やかに施錠状態を確認し、破損箇所は板やブルーシートで応急的にふさぎましょう。
水害で注意すべきは、復旧作業の長期化です。床上浸水した家屋は乾燥・消毒・修理に数週間を要するケースが多く、その間は自宅を離れざるを得ません。この「長期不在」が空き巣のターゲットになります。定期的に自宅を見回る、近隣住民に状況確認をお願いするなど、長期避難中の防犯意識を維持することが大切です。
台風の場合:停電・断水時の防犯対策
台風は事前に予測できる災害です。進路予報を確認し、早めの防犯対策を講じる時間的余裕があるのが地震との大きな違いです。
- 台風接近の24時間前には雨戸・シャッターを閉め、飛散物を片付ける
- 停電に備え、ソーラー式センサーライトや電池式の防犯グッズを確認・充電する
- 停電が長期化する場合に備え、モバイルバッテリーでスマホの充電を確保する(連絡手段の維持)
- 台風の進路が変わって避難が不要になった場合も、防犯対策はそのまま維持する
台風通過後は速やかに自宅の被害状況を確認し、窓やドアに損傷がないかチェックしましょう。屋根や外壁の修理を依頼する際は、後述の「住宅修理詐欺」に注意してください。
台風は「事前に備えられる災害」です。天気予報で台風の接近が分かった時点で、ソーラー式センサーライトや電池式防犯グッズの動作確認、非常持ち出し袋の中身チェック、スマートフォンとモバイルバッテリーの充電、近隣住民との連絡方法の確認など、防犯準備を始めましょう。事前に行動できる時間があることが台風の「強み」ですので、この時間を有効に活用してください。
避難時の防犯行動が明暗を分ける
災害が発生し、実際に避難する段階での行動が、自宅の被害を大きく左右します。「数分の行動」が明暗を分けるのです。
避難前に必ずやるべき防犯行動
避難指示が出ても、身の安全が確保できる限り、以下の防犯行動を取ってください。ただし、命の危険が迫っている場合は防犯よりも避難を最優先にしてください。
- すべての窓とドアを施錠する — 最も基本かつ最も効果的な防犯行動。1つの窓が開いているだけで侵入リスクは跳ね上がる
- 雨戸・シャッターを閉める — 窓ガラスの破損防止と侵入防止の二重の効果がある
- 貴重品を非常持ち出し袋に入れる — 現金、通帳、印鑑、保険証、マイナンバーカード、年金手帳など
- 室内灯やテレビ・ラジオをつけたまま避難する — 在宅を偽装して空き巣を抑止。タイマー付きの照明があれば時間帯で自動点灯する設定にしておく
- カーテンを閉める — 室内が見えないようにして、物色の手がかりを与えない
- 自動車内に貴重品を放置しない — 災害時は車上荒しも増加する
貴重品の保管・管理の基本を平時から実践しておくと、いざという時にスムーズに持ち出せます。非常持ち出し袋に貴重品リストを入れておき、どこに何があるか家族全員で共有しておくことが大切です。
特に重要なのが「在宅偽装」です。空き巣は犯行前に「この家に人がいるか」を確認します。テレビの音声や室内の明かりがあるだけで、「人がいるかもしれない」と判断して侵入を躊躇します。数秒の手間で実行できる対策ですので、必ず実践してください。
【保存版】避難前の防犯チェックリスト10項目
避難前に確認すべき防犯行動を、チェックリスト形式でまとめました。スマートフォンに保存するか、印刷して非常持ち出し袋に入れておくことをおすすめします。
- すべての窓の施錠を確認する
- すべてのドアの施錠を確認する
- 雨戸・シャッターがあれば閉める
- 貴重品(現金・通帳・印鑑・保険証・マイナンバーカード)を持ち出す
- テレビやラジオ、室内灯をつけて在宅を偽装する
- カーテンを閉める
- ガスの元栓を閉め、必要に応じてブレーカーを落とす(通電火災防止)
- 自宅周辺と室内の写真を撮っておく(被害確認・保険申請用)
- 近隣住民と声を掛け合い、可能であれば一緒に避難する
- 避難先で自宅の住所や留守であることを不用意に教えない
なお、項目7の「ブレーカーを落とす」は、通電火災(停電復旧時に漏電等で火災が起きる現象)の防止策です。東日本大震災では、通電火災が原因の火災が多数発生し、阪神・淡路大震災でも出火原因の約6割が電気関連と報告されています。
ただしブレーカーを落とすと在宅偽装の照明も消えるため、判断に迷うケースがあります。以下を目安にしてください。
- 長期避難が見込まれる場合 → ブレーカーを落とす(通電火災の方がリスク大)
- 短時間の避難(数時間〜1日程度) → 照明を優先してブレーカーは落とさない
- 建物に損壊がある場合 → 配線損傷のリスクが高いため、ブレーカーを落とす
絶対にやってはいけないNG行動
善意からの行動が、かえって犯罪者に情報を与えてしまうケースがあります。以下のNG行動は、災害時に多くの人がやりがちですが、防犯上は絶対に避けるべきです。
- 「避難所にいます」と張り紙をしない — 空き巣に「この家は無人」と教えているのと同じ。過去の災害でも、張り紙のある家が優先的に狙われた事例がある
- SNSで「避難しました」とリアルタイム投稿しない — リアルタイムの投稿は留守であることの告知になる。安否報告は電話やメッセージ機能で個別に行い、公開投稿するなら帰宅後にする
- 鍵を隠し場所に置いて避難しない — 郵便受けの中、植木鉢の下、メーターボックスは空き巣の「定番チェックポイント」。合鍵は家族で携帯するか、離れた場所に住む信頼できる親族に預ける
- 「すぐ戻るから」と施錠を省略しない — 短時間の避難でも施錠は必須。「ちょっとだけ」の油断が被害を招く
- 避難所で自宅の住所を大声で話さない — 周囲に「あの家は今空いている」と知らせることになる
災害時こそ「情報の管理」が重要です。自分の不在を他人に知られないよう、発信する情報には細心の注意を払いましょう。SNSの防犯リスクについても、平時から家族全員で理解しておくことをおすすめします。
避難所と被災した自宅、それぞれの場所で身を守る
避難所での生活や、被災した自宅での在宅避難にも、それぞれ防犯上のリスクがあります。まずは「避難所に行くべきか、自宅にとどまるべきか」の判断基準を確認しましょう。
在宅避難と避難所避難、防犯面での比較
災害時の避難には「避難所避難」と「在宅避難(自宅にとどまる)」の2つの選択肢があります。防犯面から見ると、それぞれにメリット・デメリットがあります。
| 項目 | 避難所避難 | 在宅避難 |
|---|---|---|
| 防犯上のメリット | 周囲に人がいるため身体的な安全を確保しやすい | 自宅の財産を常に見守ることができる |
| 防犯上のデメリット | 自宅が無人になり空き巣のリスクが高まる | 停電・断水で生活環境が悪化。孤立リスクあり |
| 貴重品の管理 | 持ち出した貴重品を常時携帯する必要あり | 自宅の金庫やセーフボックスで保管可能 |
| 推奨される条件 | 建物に損壊がある、ライフラインが長期停止、地域の治安に不安がある場合 | 建物に被害がなく、備蓄・水・電力が確保でき、近隣住民と連絡が取れる場合 |
在宅避難を選択する場合は、以下の点に注意してください。
- 近隣住民に在宅していることを伝える — 「この家には人がいる」と周囲に知られることが防犯になる
- 地域の情報を積極的に収集する — 不審者情報や治安の悪化を早期に察知する
- 電源の確保 — ソーラー充電器やモバイルバッテリーで通信手段を維持する
- 在宅避難が困難になった場合の二次避難計画を持つ — 状況が悪化したら速やかに避難所に移動できる準備をしておく
避難所での貴重品管理と盗難防止
避難所では大勢の人が共同生活を送るため、残念ながら盗難のリスクがあります。貴重品の管理方法を事前に確認しておきましょう。
- 貴重品は常に身につける — ウエストポーチや首下げポーチに入れ、就寝時も離さない
- 貴重品を見える場所に出さない — 現金の出し入れは人目を避けて行う
- 荷物を離れる際は一声かける — トイレや入浴時は信頼できる人に見ていてもらう
- 見知らぬ人に個人情報を教えない — 自宅の住所・家族構成・不在状況を安易に話さない
- スマートフォンにロックをかける — 個人情報の塊であるスマホは紛失・盗難に備える
過去の災害では、避難所で財布や携帯電話が盗まれる被害が報告されています。「同じ被災者だから」と油断せず、自分の持ち物は自分で管理するという意識を持つことが大切です。
避難所での貴重品管理に役立つグッズとして、以下を非常持ち出し袋に入れておくことをおすすめします。
- ウエストポーチまたは首下げポーチ — 貴重品を常時身につけるため
- 南京錠付きのファスナー袋 — リュックの口を固定して盗難を防止
- 予備のモバイルバッテリー — スマートフォンの充電切れ防止(連絡手段・情報収集に必須)
避難所での性被害・暴力行為から身を守る
過去の災害では、避難所での性被害や暴力行為も報告されています。特に女性や子どもは注意が必要です。
- トイレや入浴は複数人で行動する — 一人になる場面を極力減らす
- 就寝スペースは家族やグループでまとまる — 知らない人の隣は避ける
- 防犯ブザーを手元に置いておく — 緊急時に大音量で周囲に知らせる
- 被害に遭ったら声を上げる — 避難所運営スタッフ・警察に相談する。相談窓口として警察相談ダイヤル#9110も活用できる
- 子どもから目を離さない — 特に夜間は保護者が付き添う
「避難所は安全な場所」という思い込みは禁物です。内閣府の調査では、東日本大震災の避難所でDV・性暴力の被害が報告されており、避難所という閉鎖空間特有のリスクがあることが指摘されています。
特に夜間の移動は複数人で行動することを徹底してください。避難所の運営側も、女性専用スペースの確保、トイレ・更衣室への十分な照明の設置、見回りの実施など、安全な環境づくりに取り組むことが求められます。被害を受けた場合やリスクを感じた場合は、ためらわずに相談してください。
- 避難所運営スタッフ — まず最も身近な相談先
- 警察相談ダイヤル#9110 — 緊急性がない場合の相談窓口
- 110番 — 犯罪行為があった場合の緊急通報
- 配偶者暴力相談支援センター — DV被害の専門相談窓口
被災した自宅に戻る際の注意点
避難生活の後、被災した自宅に一時帰宅する場面でも注意が必要です。
- 一人で帰宅しない — 家族や知人と2人以上で行動する
- 周囲の状況を確認してから入る — 不審な人物がいないか、新たな損壊がないか確認
- 室内に入ったらまず写真を撮る — 荒らされた形跡がないか記録する(被害届・保険申請用)
- 不審者を見かけたら110番通報 — 「見て見ぬふり」は犯罪の放置につながる
- がれき撤去や片付けのボランティアを装った不審者に注意 — 身分証の提示を求め、不審な場合は断る
- 自宅の被害状況を写真・動画で記録する — 保険金請求や被害届に必要な証拠になる。荒らされた形跡がある場合は、片付けずに警察に連絡
一時帰宅の際は、自治体や自主防犯組織の見回りスケジュールを確認し、可能であればパトロール中の時間帯に合わせて帰宅すると安心です。
災害に便乗した詐欺・悪質商法の手口と撃退法
災害直後には、被災者の不安につけ込む詐欺や悪質商法が横行します。「心の隙間に付け入る卑劣な犯罪」から身を守る方法を解説します。国民生活センターによると、過去の大規模災害ではいずれも発災から数日以内に詐欺の相談が急増しており、被災者だけでなく被災地以外の住民を狙った詐欺も多発しています。(出典:国民生活センター「災害に便乗した悪質商法」)
住宅修理詐欺の典型的な手口
災害後に最も多い詐欺の一つが「住宅修理詐欺」です。
| 手口 | 具体的な内容 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 訪問型修理詐欺 | 「屋根が壊れている」と不安を煽り、高額な修理契約を迫る | 自分で被害を確認していない修理は契約しない |
| ブルーシート詐欺 | 「行政から委託された」と称してブルーシートを高額で売りつける | 行政が個人宅に直接訪問して物品を販売することはない |
| 保険金請求代行詐欺 | 「保険金が下りるから無料で修理できる」と誘い、高額な手数料を請求 | 保険金の請求は自分で保険会社に連絡する |
| 前払い詐欺 | 着手金を受け取ったまま工事に着手しない | 工事完了後の支払い、または分割払いを交渉する |
公的機関を装った詐欺の見分け方
災害後には、公的機関を装った詐欺も急増します。
- 自治体職員を名乗る電話 — 「義援金を集めています」「還付金があります」→ 自治体が電話で義援金を求めることは絶対にない(出典:金融庁「義援金等を装った詐欺にご注意」)
- 消防・警察を名乗る訪問 — 「点検が必要」と言って家に上がり込もうとする → 事前のアポなしで個人宅に訪問することは原則ない
- 電力・ガス会社を装った訪問 — 「復旧工事が必要」として高額な費用を請求 → ライフラインの復旧工事はインフラ会社が行い、個人に直接費用を請求されることはない
能登半島地震で報告された最新の詐欺手口
2024年の能登半島地震では、従来型の詐欺に加えてデジタルを活用した新たな手口も報告されました。(出典:国民生活センター「令和6年能登半島地震に便乗した詐欺的トラブルにご注意ください」)
- SNS義援金詐欺 — 被災者を装い、PayPay等の送金URLをSNSに投稿して寄付金を騙し取る
- 偽の支援物資募集 — 「被災地に届けます」と称して物資を集め、転売する
- なりすまし電話 — 自治体の防災担当者を名乗り、「調査のため」と称して個人情報を聞き出す
- フィッシング詐欺 — 災害支援を装ったメールやSMSで偽サイトに誘導し、クレジットカード情報を盗む
- 偽のボランティア — ボランティアを装って被災者宅に入り込み、金品を盗む
能登半島地震に関する詐欺の相談件数は、発災から約3週間で155件に達しました。デジタル技術の発達により、被災地にいなくても被災者を狙える詐欺が増加していることが、近年の災害便乗詐欺の特徴です。
特にSNSを悪用した詐欺は従来の災害では見られなかった新しいパターンです。「被災地のために何かしたい」という善意の気持ちにつけ込む卑劣な手口ですので、義援金を送る際は必ず自治体や赤十字などの公式窓口を利用しましょう。
詐欺に遭わないための5つの鉄則
- その場で契約しない — 「今すぐ決めないと」と急かす業者は詐欺の可能性が高い。必ず冷却期間を置く
- 複数の業者から見積もりを取る — 1社だけの見積もりで契約しない。地元の工務店や自治体の紹介業者を優先
- 身元を確認する — 名刺、会社名、住所、電話番号を確認。名乗らない業者は断る
- 行政の公式情報を確認する — 支援制度は自治体の公式サイトや広報で確認する。SNSの情報を鵜呑みにしない
- 困ったら相談する — 消費者ホットライン「188」、警察相談ダイヤル#9110に連絡する
万が一、契約してしまった場合でも諦める必要はありません。災害に便乗した悪質な訪問販売については、契約から8日以内であればクーリングオフ(契約解除)が可能です。また、虚偽の説明による契約は、8日を過ぎてからでも取り消しが認められるケースがあります。被害に遭った場合は速やかに消費生活センターに相談しましょう。(出典:国民生活センター「災害に便乗した悪質商法」)
災害時は冷静な判断が難しい精神状態にあるため、詐欺に騙されやすくなります。「被災して大変な時に、こんな判断を求められるなんて」と感じるかもしれませんが、だからこそ「その場で決めない」という鉄則を、平時から家族で共有しておくことが重要です。
「ご近所の目」が最強の防犯システム:地域で取り組む防災と防犯
災害時の防犯対策は、個人の備えだけでは限界があります。ご近所付き合いを通じた地域の「目」が、最も強力な防犯システムになります。
普段からの挨拶・情報共有が防犯力を高める
地域の防犯力を高めるためには、平時からのコミュニケーションが重要です。
- 顔見知りの関係を築く — 普段から挨拶を交わしていれば、不審者に気づきやすくなる
- 連絡先を交換しておく — 災害時に互いの安否確認・自宅の状況確認ができる
- 避難計画を共有する — 近隣で「誰がどこに避難するか」を把握しておく
- 要配慮者を把握する — 高齢者・障がい者・小さな子どものいる世帯を知っておく
「お互いの家を気にかけ合う」関係性こそが、最もコストがかからず、最も効果が高い防犯対策です。災害時には「○○さんのお宅は大丈夫かな」と声をかけ合えるだけで、空き巣の抑止力になります。
自主防犯パトロールの始め方
地域で防犯パトロールを始めることで、災害時にもスムーズに防犯体制を構築できます。
- まずは自治会や町内会に相談する — 既存の防災組織と連携するのが効率的
- 無理のない頻度で始める — 月1回の見回りでも効果がある。まずはスタートすることが大切
- パトロール用のベストや腕章を用意する — 「見守られている」という抑止効果が大きい
- 防災訓練と防犯訓練を併せて実施する — 年1回の防災訓練に防犯チェック項目を追加する
- 不審な情報を共有するグループを作る — LINEグループやSNSコミュニティで情報を共有
家族でつくる防犯ルールと合わせて、地域全体で「じぶん防犯」を実践していきましょう。家族単位の防犯意識と地域のネットワークが組み合わさることで、災害時にも揺るがない防犯体制が築けます。
実際に、東日本大震災や能登半島地震でも、日頃から近隣住民同士のつながりが強い地域では、犯罪被害が少なかったという報告があります。「ご近所の目」は、どんな高性能の防犯カメラよりも柔軟で、どんな停電にも負けない防犯システムなのです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 災害時に空き巣が増えるのはなぜですか?
災害時は住民の避難で無人の家が増え、停電で防犯カメラやセンサーライトが機能停止し、警察も救助活動に人員を割かれるため、空き巣犯にとって「捕まりにくい状況」が生まれます。東日本大震災では被災地の窃盗被害総額が数億円規模に達しました。
Q2. 避難するときの防犯対策で一番大切なことは?
最も大切なのは「すべての窓とドアの施錠」です。災害時の侵入窃盗も無施錠の家が最初のターゲットになります。施錠に加え、雨戸やシャッターを閉める、貴重品を持ち出す、室内灯をつけて在宅を偽装するなどの対策を組み合わせましょう。
Q3. 避難所で貴重品を守るにはどうすればいいですか?
貴重品は肌身離さず持ち歩くのが基本です。ウエストポーチや首下げポーチに現金・通帳・保険証などをまとめ、就寝時も身につけておきましょう。避難所では目の届く場所に荷物を置き、離れる際は信頼できる人に一声かけることも大切です。
Q4. 停電しても使える防犯グッズはありますか?
ソーラー充電式のセンサーライト、電池式の防犯ブザー・窓アラーム、乾電池やモバイルバッテリーで動く防犯カメラなどがあります。災害時に電源が断たれても機能する防犯グッズを、平時から準備しておくことが重要です。センサーライトの選び方も参考にしてください。
Q5. 災害後の詐欺の見分け方を教えてください
「行政から委託された」と名乗る訪問者、契約を急がせる業者、義援金を現金で集めようとする電話は詐欺の可能性が高いです。行政機関が電話で義援金を求めることはありません。不審に感じたら、その場で契約せず消費者ホットライン(188)や警察相談ダイヤル#9110に相談しましょう。
Q6. 地震のとき防犯カメラは動きますか?
商用電源に依存する防犯カメラは停電時に機能停止します。災害に備えるなら、ソーラーパネル付き防犯カメラ、バッテリー内蔵型カメラ、またはUPS(無停電電源装置)との組み合わせが有効です。録画データはクラウド保存にしておくと、本体が破損しても映像が残ります。
Q7. 避難時に「避難所にいます」と張り紙をしてもいいですか?
絶対にやめてください。「避難所にいます」という張り紙は、空き巣犯に「この家は今無人です」と知らせているのと同じです。家族や知人への連絡は電話やSNSのメッセージ機能を使い、自宅のドアや窓に留守を示す掲示をしないようにしましょう。
まとめ:今日から始める「じぶん防犯」で、災害にも負けない備えを
災害は「日常」だけでなく「安全」も奪います。しかし、正しい知識と事前の備えがあれば、被害を最小限に抑えることができます。
- 施錠の徹底 — 災害時でも平時でも、最も基本かつ最も効果的な防犯行動
- 停電対応グッズを準備する — ソーラー式センサーライト、電池式窓アラームなど電源不要の対策を平時から用意
- 避難前チェックリストを活用する — 10項目をスマホに保存、または印刷して非常持ち出し袋に
- 貴重品は肌身離さない — 避難所では盗難リスクあり。ウエストポーチで常時携帯
- 詐欺には「その場で契約しない」 — 迷ったら消費者ホットライン188、警察相談#9110に相談
- ご近所との関係が最強の防犯 — 普段からの声かけ・連絡先交換が災害時の助け合いにつながる
「災害が起きてから備える」では遅すぎます。日本は地震・台風・水害の多い国です。いつ、どこで災害が起きてもおかしくありません。この記事で紹介した対策を、ぜひ今日から一つずつ実践してください。
まずは「避難前の防犯チェックリスト」をスマートフォンに保存すること。次に、非常持ち出し袋に貴重品リストとウエストポーチを入れておくこと。そして、ご近所の方と「災害時はお互いの家を気にかけ合おう」と一声交わすこと。この3つのアクションは、今日中に実行できます。
「正しい知識が最強の武器」——これが防犯設備士としてお伝えしたい最も大切なメッセージです。災害は避けられなくても、犯罪被害は防ぐことができます。あなたと家族の安全を、「じぶん防犯」で守りましょう。
防犯対策の全体像は「じぶん防犯」トップページで確認できます。空き巣の手口と対策や防犯の4原則、ご近所付き合いが防犯に効く理由、家族でつくる防犯ルールなど、関連記事も合わせてご覧ください。