じぶん防犯

子供への防犯の教え方|怖がらせずに危険を伝える3つの原則と声かけ例

「子供に防犯を教えたいけれど、怖がらせてしまわないか心配」──そんな悩みを抱える保護者は少なくありません。実際に防犯教室の現場では、不審者の話を聞いて泣き出す子供や、外出を怖がるようになる子供がいます。しかし防犯教育をしないわけにはいきません。大切なのは「何を教えるか」ではなく「どう伝えるか」です。本記事では防犯設備士の視点から、子供を怖がらせずに危険を伝えるコミュニケーション術を、年齢別の声かけフレーズとともに解説します。

【結論】怖がらせない防犯教育 3つの原則

  • 原則1:「怖い人」ではなく「怖い場面」で教える ── 人ではなく状況で判断する力を育てる
  • 原則2:クイズ・ゲーム形式で「楽しく」学ぶ ── 恐怖ではなくワクワクで記憶に残す
  • 原則3:「できた!」の成功体験で終わらせる ── 最後は必ず「自分は守れる」という自信で締める

この3つの原則を守れば、子供に恐怖心を植え付けることなく、自分の身を守る力を育てられます。以下、具体的なNG表現・OK表現・年齢別の声かけフレーズを紹介します。

防犯教育で子供を怖がらせてしまうNGパターン5つ

まず「やってはいけない」ことを確認しましょう。善意の防犯教育が子供の不安を増幅させてしまうのは、以下のようなパターンに陥った場合です。

NG① 「知らない人は全員危ない」と教える

「知らない人と話しちゃダメ」と教える保護者は多いですが、これは子供に過度な人間不信を植え付けるリスクがあります。子供にとって「知らない人」の定義はあいまいで、近所の人やお店の人も「知らない人」に分類してしまうことがあります。

NG表現OK表現
「知らない人は全員危ない」「知らない人に『ついていく』『車に乗る』のがダメだよ」
「知らない人と話しちゃダメ」「知らない人に誘われても、一人でついていかないでね」

NG② 「連れていかれたら帰ってこれないよ」と脅す

恐怖で行動を制限しようとする言い方は、子供に「世界は怖い場所だ」という誤った認識を持たせてしまいます。「帰ってこれない」「殺される」などの極端な表現は、防犯意識ではなく不安感だけを高めます。

NG表現OK表現
「連れていかれたら帰ってこれないよ」「だから『いかのおすし』を覚えておこうね」
「悪い人にさらわれるよ」「困ったときは大人に助けてもらおうね」

NG③ ニュースや事件の詳細を伝える

テレビの事件報道を見て「だから気をつけなさい」と教える場面がありますが、特に未就学児〜低学年の子供には事件の詳細は大きな心理的負担になります。子供は大人のように情報を客観的に処理できません。

NG表現OK表現
「こんな怖い事件があったんだよ」「みんなが安全に暮らせるように、お約束を確認しようね」

NG④ 子供の年齢に合わない情報を与える

3歳の子供にSNSの危険性を教えたり、低学年に犯罪統計を見せたりしても理解できず、ただ怖いという感情だけが残ります。年齢に合わない情報は混乱と不安を招くだけです。

NG⑤ 一度に多くのルールを詰め込む

「ついていかない」「車に乗らない」「大声を出す」「逃げる」「知らせる」──「いかのおすし」の5つの約束を一度に全部教えようとすると、子供は情報過多でパニックになることがあります。まずは1〜2つから始め、定着してから次のルールを追加しましょう。

年齢別|怖がらせない声かけフレーズ集

子供の発達段階に合わせた声かけが、怖がらせない防犯教育の鍵です。年齢ごとのフレーズ例を紹介します。

2〜3歳「お約束ごっこ」で覚える基本フレーズ

2〜3歳は言葉の理解がまだ限定的で、「なぜ」の理由説明よりも繰り返しのリズムで覚えます。

  • 「ママ・パパと一緒にいようね」(これだけで十分)
  • 「お名前を聞かれても、知らない人には教えなくていいよ」
  • 「手をつないでお散歩しようね」

この年齢では「不審者」「危ない人」という概念を教える必要はありません。「ママ・パパと一緒にいる」ことだけを繰り返し伝えましょう。

4〜5歳「なぜ?」が芽生える時期の伝え方

4〜5歳は「なぜ?」が増える時期で、理由を添えると納得しやすくなります。ただし、理由は簡潔でポジティブなものにしましょう。

  • 「知らない人にお菓子をもらったら?→『いりません』って言えたらかっこいいね!」
  • 「迷子になったら?→お店の人に『助けてください』って言えば大丈夫だよ」
  • 「大きな声で『助けて!』って言う練習、一緒にやってみよう!」

保育園・幼稚園の防犯教室でも、この年齢では紙芝居やダンスを使った楽しいアプローチが推奨されています。

小学1〜2年生 いかのおすしを「自分ごと」にするフレーズ

入学後は「いかのおすし」を本格的に教える時期です。ポイントは質問形式で考えさせること。

  • 「学校から帰る途中に知らない人が『お菓子あげるよ』って言ったら、どうする?」
  • 「正解!ついていかない。これが『いかのおすし』の『い・か』だね」
  • 防犯ブザーの使い方、一緒に練習してみよう」

答えを教えるのではなく、子供に考えさせてから正解を伝えると「自分でできた!」という成功体験になります。「いかのおすし」理解度チェッククイズを使えば、年齢別のクイズで楽しみながら定着を確認できます。

小学3〜4年生 場面判断力を育てるフレーズ

中学年は場面に応じた判断力を養う時期です。「ひまわり」の標語を使って、危険な場所を自分で見分ける力も育てましょう。

  • 「この通学路で、一人になる場所はどこだと思う?」
  • 「もし後ろからずっとついてくる人がいたら、どこに逃げ込める?」
  • こども110番の家の場所、一緒に確認しておこう」

この年齢では「怖い」ではなく**「考える」**モードで伝えることが大切です。探偵ごっこのように「危険な場所を見つけよう」と楽しみながら通学路の安全確認をするのも効果的です。

小学5〜6年生 自分で考え行動する力を引き出すフレーズ

高学年は自分で判断し行動する力を育てます。また、インターネットの安全教育も追加する時期です。

  • 「もしこの場面に遭遇したら、あなたならどうする?」(答えを求めず、考えるプロセスを重視)
  • 「低学年の子が困っていたら、どう助けてあげる?」(共助の意識)
  • 「ネットで知らない人からメッセージが来たら、どうするのが安全だと思う?」

高学年には一方的に教えるのではなく、対話形式で考えを引き出しましょう。「なぜそう思うの?」と掘り下げることで、自分で判断する力が育ちます。小学校の防犯訓練でも、学年別プログラム設計の参考にできます。

年齢別の声かけポイント比較表

年齢別の教え方のポイントを一覧で整理します。

年齢伝え方のコツ避けるべきこと使う教材
2〜3歳リズムと繰り返し理由の長い説明絵本・手遊び
4〜5歳簡潔な理由+ポジティブな言い換え事件の話・脅し紙芝居・ダンス動画
小1〜2年クイズ形式で考えさせる一度に全部教えるいかのおすしプリント
小3〜4年場面を見せて判断させる抽象的な注意安全マップ・ひまわり
小5〜6年対話形式で引き出す一方的な指示ディスカッション

「いかのおすし」を怖がらせずに教える5つの工夫

「いかのおすし」を教えるとき、「怖い話」にならないための具体的な工夫を紹介します。

1. 絵本の読み聞かせから始める

いきなり「不審者」の話をするのではなく、防犯絵本の読み聞かせから始めましょう。絵本は物語という安全な枠組みの中で危険を伝えられるため、子供が怖がりにくい入口になります。

おすすめの防犯絵本を紹介します。

絵本タイトル対象年齢特徴
『いやです、だめです、いきません』(岩崎書店)4歳〜断り方を具体的に学べる
『あぶないよ!おうちのなかで』(ほるぷ出版)3歳〜身近な危険から防犯意識を育てる
『はじめてのあんぜんえほん』(世界文化社)3歳〜交通安全と防犯の基本をカバー

2. クイズ形式で「正解」を体験させる

「知らない人にお菓子をもらったらどうする?」──クイズ形式にすると、子供は**恐怖ではなく「考える楽しさ」**で防犯知識を吸収します。正解したら「すごい!」と褒めることで、ポジティブな記憶として定着します。

3. ロールプレイは「ヒーローごっこ」として

ロールプレイは効果的な教育方法ですが、やり方を間違えると子供を怖がらせます。ポイントは「怖い場面を再現する」のではなく「上手に対処するヒーローになる」という設定にすることです。

  • 「今から○○ちゃんは防犯ヒーローね。知らない人に声をかけられたら、かっこよく断ってみて!」
  • うまくできたら「さすが防犯ヒーロー!」と盛り上げる
  • 怖がる様子が見えたらすぐに中断し、「もう十分上手だよ」と安心させる

4. 日常の散歩・買い物を練習の場にする

特別な「防犯教室」をしなくても、日常の外出が最高の教材です。

  • 散歩中に「ここは周りから見えにくい場所だね」と「ひまわり」の視点で観察
  • 買い物中に「もし迷子になったら、お店の人に声をかけてね」と自然に伝える
  • 公園で「知らない人に声をかけられたらどうする?」とさりげなく確認

5. 親子で「安全マップ」を作る

通学路や自宅周辺の地図に、こども110番の家やコンビニなど「助けを求められる場所」を書き込む「安全マップ」作りは、危険を探すのではなく「安全な場所を見つける」ポジティブな活動です。

子供が怖がりすぎてしまった場合の対処法

防犯教育の後に子供が怖がりすぎてしまうことがあります。これは「やりすぎ」のサインです。落ち着いて対処しましょう。

怖がりすぎのサイン3つ

  • 外出を嫌がる: 一人でトイレに行けない、外に出たがらない、登校を渋る
  • 夜の不安が増す: 一人で眠れなくなる、夜泣きが増える、暗い場所を極端に怖がる
  • 人を怖がる: 近所の人や親戚にも警戒する、知っている人にも話しかけられない

これらのサインが1週間以上続く場合は、防犯教育の内容や伝え方を見直す必要があります。

安心感を取り戻す親の声かけ

怖がっている子供には、まず安心感を与える声かけを優先します。

  • 「パパとママが絶対に守るから大丈夫だよ」
  • 「怖かったね。でもね、○○ちゃんの周りには助けてくれる人がたくさんいるよ」
  • 「お約束を覚えている○○ちゃんは、ちゃんと自分を守れるよ」

「大丈夫」「安全だよ」を繰り返し伝え、子供が安心できるまで寄り添いましょう。防犯の話はしばらくお休みし、日常の安心感を取り戻すことを優先してください。

段階的に日常を取り戻すステップ

  1. 防犯の話を一旦やめる(1〜2週間)
  2. 日常の楽しい外出を増やす(公園遊び・買い物など安全な体験)
  3. 「助けてくれる人」の存在を伝える(先生・近所の人・警察など)
  4. 子供が落ち着いたら、楽しい形式で少しずつ再開(絵本・クイズ形式)

深刻な場合(数週間以上改善しない、日常生活に支障が出ている場合)は、スクールカウンセラーや専門家への相談も検討しましょう。

子供が防犯について質問してきた時の答え方

子供が「悪い人はいるの?」「怖い人が来たらどうするの?」と聞いてくることがあります。こうした質問を避けずに、安心感を与えながら答える方法を紹介します。

「悪い人はいるの?」への答え方

  • NG:「うん、世の中には悪い人がたくさんいるよ」
  • OK:「ほとんどの人はいい人だよ。でもたまに、よくないことをする人もいるから、お約束を覚えておこうね」

「悪い人」の存在を完全に否定する必要はありませんが、**「ほとんどの人は味方」**というメッセージを必ずセットで伝えましょう。

「ママがいない時に怖い人が来たら?」への答え方

  • NG:「そんなこと考えなくていいよ」(不安を無視している)
  • OK:「そういう時のためにお約束を練習してるんだよ。大きな声を出して逃げれば大丈夫。それに先生や近所のおばさんも助けてくれるよ」

子供の不安を受け止めた上で、**「対処法を知っている自分は守れる」**という自信につなげます。

ニュースを見て不安になった場合の対応

テレビで事件のニュースが流れた時は、子供の反応を観察しましょう。不安そうにしていたら、以下のように対応します。

  • 「怖いニュースだったね。でもこういうことが起きないように、警察の人やたくさんの大人が頑張って守ってくれているよ」
  • 「○○ちゃんは『いかのおすし』を知っているから、自分の身を守れるよね」
  • 必要に応じてテレビを消し、楽しい話題に切り替える

低年齢の子供には事件報道を見せないこと自体が最善の予防策です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 防犯教育は何歳から始めるべきですか?

2〜3歳から始められます。ただし最初は「ママと一緒にいようね」の1つだけで十分です。4〜5歳で「いかのおすし」の導入、小学校入学後に本格的な防犯教育に進むのが自然なステップです。

Q2. 子供が不審者を怖がりすぎるときはどうすればいいですか?

まず防犯の話をいったんお休みし、「パパとママが守るから大丈夫」と安心感を伝えてください。1〜2週間後に絵本やクイズなど楽しい形式で少しずつ再開しましょう。数週間以上改善しない場合はスクールカウンセラーへの相談も検討してください。

Q3. 「知らない人についていかない」は何歳から理解できますか?

言葉の意味を理解できるのは4〜5歳頃からです。ただし「知らない人」の概念は子供にとって曖昧なので、「知らない人が『ついておいで』と言っても行かないでね」のように具体的な場面で教えましょう。

Q4. 防犯教育で使ってはいけないNGワードは?

「連れていかれたら帰ってこれないよ」「殺されるよ」などの脅し表現が代表的なNGワードです。また「知らない人は全員危ない」も、人間不信を招くリスクがあります。「ついていかない」「車に乗らない」など、具体的な行動を教えましょう。

Q5. 子供が外出を怖がるようになった場合はどうしますか?

防犯教育が過度だったサインです。まず日常の楽しい外出(公園・買い物など安全な体験)を増やし、「周りには助けてくれる人がたくさんいるよ」と安心感を与えてください。外出は無理強いせず、子供のペースに合わせて段階的に広げていきましょう。

Q6. 防犯の絵本は何歳から読み聞かせできますか?

3歳頃から防犯をテーマにした絵本の読み聞かせが可能です。『あぶないよ!おうちのなかで』など、身近な安全をテーマにした絵本から始めるとよいでしょう。不審者対応に特化した絵本は4〜5歳以降がおすすめです。

Q7. ロールプレイで子供が泣いてしまったらどうすべきですか?

すぐに中断し、「もう十分上手だったよ」と安心させてください。泣いた状態で続けると恐怖の記憶だけが残ります。後日、絵本やクイズなどより穏やかな方法で再チャレンジしましょう。ロールプレイは「ヒーローごっこ」として楽しい雰囲気で行うのがコツです。

まとめ

子供への防犯教育は「怖がらせない」ことが最も大切です。恐怖ではなく、「自分の身を守れる」という自信を育てましょう。

  • 3つの原則: 「怖い人」でなく「怖い場面」で教える/クイズ・ゲーム形式で楽しく/成功体験で終わらせる
  • NGパターンを避ける: 脅し表現・事件の詳細・年齢に合わない情報・一度に詰め込みすぎはNG
  • 年齢に合わせた声かけ: 2〜3歳は繰り返し、4〜5歳は理由付き、小学生はクイズ・対話形式
  • いかのおすしは楽しく教える: 絵本→クイズ→ロールプレイ→日常実践の順で段階的に
  • 怖がりすぎたらいったん休む: 安心感を最優先し、楽しい形式で少しずつ再開
  • 子供の質問には正直に: 「ほとんどの人は味方」のメッセージを添えて答える

防犯教育は一度で完了するものではなく、日常の中で繰り返し自然に伝えていくものです。まずは「いかのおすし」の5つの約束を確認し、お子さんの年齢に合った方法で少しずつ始めてみてください。

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「いかのおすし」の無料教材(プリント・紙芝居)防犯標語の使い分けガイドも合わせてご活用ください。そのほかの防犯対策は「じぶん防犯」トップページからご覧ください。

この記事を書いた人
防犯設備士(公益社団法人 日本防犯設備協会認定)

防犯設備士として10年以上のセキュリティ業界経験を持つ。住宅・店舗・施設の防犯カメラ設置や防犯診断の現場経験をもとに、専門知識を一般の方にもわかりやすく発信している。

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